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お楽しみ、再び(8)
ん…何か触ってる…何?擽ったいよぉ…触らないで…もう少し寝かせて…
俺を触る“何か”から逃げるように、首を振る。
「…檸檬…檸檬…」
俺を呼んでる?この声は…満さん?
んんっ…重たい瞼をそっと引き上げると、ホッとした顔の満さんがいた。
「(満さん?)」
んあっ!?声が出ない?
「檸檬っ!はぁ…良かった、気が付いた…」
「(満さん、俺…)」
「あー、声、カスカスだ…ごめん。
俺、マジでお前のこと抱き潰した……
トンじゃって意識がなくなったから焦ったー。
大丈夫か?」
「(身体が動かない…)」
「マジか…でも大丈夫だ!明日も休みだし、このままもう一泊予約したから動かなくてもいいぞ!」
「(え!?お泊まり!?)」
「うん…でも、もう無茶なことはしないから…
かわいい檸檬を堪能できて、俺は満足だ!
後で風呂に入れてやるからな。」
こんなに動けなくなる程、どんな抱かれ方をしたんだろう。
俺、記憶がない。
でも確かなのは…メチャクチャ愛された、ということ。
満さんの満面の笑みを確認した俺は、もう落ちてくる瞼を引き上げることができずに、また眠りに落ちた。
ぴちゃん…ぴちゃん……
何だろう。何かに抱きとめられて、ゆらゆらとぬるい何かの中に浮かんでいる。
ほおっ…と大きく息を吐くと、ゆっくりと目を開けた。
「檸檬!」
「(んあっ!?満さん!?あっ、お風呂…)」
「うん、あー、檸檬…まだちょっと声カスカスだな、ごめん。
そうだよ、綺麗にしてやろうと思って♡
俺が目一杯ぐちゃぐちゃに汚してやった、むぶっ」
「(…言わなくてもいいですっ。)」
「むぐっ、むごっ…そんな元気があるならまだ大丈夫か。」
「(ひぅっ)」
満さんは俺の頭を撫でながら「冗談だよ」と笑ったけど、目は笑っていなかった。
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