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惚気(1)

あぁ、今まで生きてきて、サイコーの誕生日だった。 俺のカワイイ(檸檬)は、予想の遥か上を突き抜けた誕プレをくれた。 もう、一生忘れない。忘れるもんか。 いやいや、できるなら何度でもお願いしたい。 何なら俺が3ダースセットで注文するから、毎日拝観したいくらいだ。絶対希望。 毎日違うものを着てもお釣りがくるぞ。 ネットで検索するけどイマイチぐぐっとこない。 やはりこれは、遥さんにお願いしなければならないかな。 笑われそうで恥ずかしいが、背に腹は変えられないのだ。 檸檬の白い肌なら、ブルー系も映えるはず。 ピジョンブラッドのような深紅もいいな。 淡いパステルピンクも似合うと思う。 いずれにせよ、檸檬ならどんな色でもどんな形でも着こなせる、ってことだな。 むふふっ 「…う、社長…満っ!!!」 「うわっ、吃驚した…黒原、そんな大声出してどうしたんだよ。 静かにしてくれよ。五月蝿い。」 「…お言葉ですが…5回呼んでも反応がありませんでしたので。 只今、仕事中です。 白昼夢はお止め下さい。迷惑です。 曲がりなりにも会社のトップが真っ昼間っから、そんな惚けた顔をしていたら、下の者に示しが付きません。 あと30分後に会議が始まります。 それまでにこの書類にお目通しを。」 「はいはい。すみませんねぇ。わっかりましたよーだ。 あれ?檸檬は?」 愛しい伴侶の姿が見えない。 さっきまでそこで電話をしていたと思ってんだけど。 「表彰者の名前が1文字間違って提出されていて、急いで書き直しをしてくれています。 集中力が必要なので、邪魔しないようにして下さい。」 「くっ…分かってる。」 檸檬は美しい文字を書くので、あちこちで重宝されているのだ。 一々ごもっともなことを言うな。俊樹のくせに。 ムッとしながらも、俊樹に言われた通りに机の上に置かれた書類を手に取った。

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