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惚気(3)

何だ?こんな所で愛の告白か? いいぞ!受けて立とうじゃないか! 「おっ、おう、何だ?」 「…顔が…崩れてます。黒原さんから『重々ご注意を』と言付かっていますから。 “しっかりなさって下さい”」 最後はブリザードが吹き荒れる声音だった。 「ううっ…承知した…」 俺達のひそひそ話が聞こえたのか、赤石の肩が震えている。 くそっ、赤石め。そうやって笑ってられるのも今のうちだぞ。お前ん家も似たようなものじゃないか! …今度、若林を呼び付けて根掘り葉掘り聞いてもいいんだぜ。 俺のジト目に気付いた赤石は、片方の口角をクッと上げた後、真顔に戻った。 目の端で、檸檬を追い掛ける。 うーん、やっぱり俺の檸檬は綺麗でかわいいなぁ…今夜:|も、アンナコトやコンナコトを… 心の声が漏れたのか、檸檬がこちらを見た。 ビュオォーーーッ 吹き荒れるブリザードの視線に身震いして顔を戻すと、慌ててパソコンの画面に目を落とした。 「社長、どうなさったんですか? 顔面崩壊、お珍しいですね。」 無事に会議が終わって、赤石が俺の所に寄って来て、密やかに尋ねた。 「そりゃあ、お前…俺がこうなるのは檸檬絡みのことだ、って分かってるんだろう?」 「ははっ、やっぱりそうでしたか。 でも、檸檬君も満更ではなさそうでしたけど?」 「何っ、ホントかっ!?」 ニヤニヤ。 俺はこの紳士然とした赤石を凹ませてやりたくなった。 「赤石、この後時間あるか? コーヒーでも飲みにちょっと出ないか?勿論、俺の奢りだ。」 「ちょっと寺橋に確認しますね。」 赤石はそう言って電話を掛けるため、少し離れた。 俺もその間に黒原に電話を掛け、至急の用事がないのを確認してから、1時間程外に出る、と告げた。 「社長、お待たせしました。大丈夫です。」 「そうか、じゃあ行くか。」 行き先は、個室もあるコーヒーの美味い喫茶店だ。

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