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惚気(6)
なっ、何だと!?
「おい、ちょっと見せてくれ!」
俺は赤石がドヤ顔で差し出した携帯を奪い取った。
了解を得てから画面をスクロールしていく。
確かに…レ点のチェックが入っているモノが数点ある…
あああっ、俺が目をつけてたやつに印がついてるじゃんかっ!
俺の百面相が面白かったのか、赤石は喉奥で笑いを堪えながら
「社長…色違いもありますし、新作も入ってくるそうです。
確か…隔週の金曜日に、と遥さんが仰ってましたよ。
今度ご一緒しませんか?」
うぬぬぬっ
「…コホン、そっ、そうだな。
実際に見てみるのもいいかもな、うん。
あっ、この話は檸檬には」
「承知してます。勿論内緒で。
社長…ウチの弘毅にも内緒ですよ?」
「当たり前じゃないか!
……で、いつにする?遥さんに確認して…」
「俺が連絡しますよ。
今週か来週の金曜日…ですよね、きっと。
社長、予定空けといて下さいね。
…社長?聞いてますか?」
「えっ、おう、聞いてるぞ。
じゃあ、ソッチの方は頼んだ。」
ぷっ
「…赤石、何笑ってるんだ?」
「…いえ…社長も愛するヨメのことになると、そんな顔をされるんですね。
完全に崩れてますよ、顔。
さっきもそれで叱られてたんじゃないんですか?」
「はぁ…お前には何でもモロバレかぁ…
そうだよ。
檸檬だけじゃなくて黒原にも釘刺されてるからな。『しっかりして下さい』って。
俺自身…戸惑ってるんだ。
こんな気持ちになったのなんて初めてだからなぁ。」
「社長…何だかかわいいですね。」
「ばか、止めろ。
俺に惚れても愛するヨメがいるから、お前の入る隙間なんかないぞ。」
「あははっ!それは熨斗 付けてお返ししますよ。
…まぁ、俺も他人 のこと言えませんけどね。」
俺は赤石の過去の気の毒な騒動のことを思い出した。
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