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ダンナ達の思惑(6)

「なっ、何でもないぞ。 それより、今日の予定は?蓑田専務との会食は11時半からだったよな?」 「はい。変更もありませんでしたから… 社長?」 「何だ?」 「口元が緩んでいます…鏡を見てから対応して下さいね。」 ぎくっ 「そんなに酷いか?」 「はい。ご確認下さい。」 ピシャリと容赦なく言われた。 鋭い俊樹に邪な気持ちを見透かされたような気がして、余裕ぶってワザとゆっくり振り向き、洗面所に駆け込んだ。 あぁ…俊樹の言う通り、締まりのない顔付きだ…これは指摘されても仕方がない。 ははっ、俺としたことが…浮かれ過ぎにも程がある。 満、ここにいる間は大勢の社員を抱えた一国一城の主なんだから。グループ会社を含めたら、今はどれだけの社員達が働いてくれているんだろう……しっかりしろ! 己を叱咤激励して、用を足して廊下に出た…おっ、あの後ろ姿は…… 「赤石部長っ!」 「社長っ!お疲れ様です!」 「あぁ、お疲れ様。 先程も…コホン、ありがとうな。」 「いえいえ。ご検討よろしくお願いいたします。」 「うん、スケジュール調整してから追って連絡するから、よろしくな。」 「はい、承知いたしました。では。」 ははっ、こんな所で出会うとは。 ニヤニヤ…ハッ!いかんいかん! これでは、また俊樹に睨まれてしまう。 パンパンと頬を叩き気合を入れて、社長室に足を向けたのだった。 「社長、お出掛けでしたか?お帰りなさい。」 「いやいや、野暮用だよ。 檸檬、蓑田専務の奥様は確か明後日誕生日ではなかったか?」 「確認します!」 「社長!仰る通りです!何かご用意しましょうか?」 「そうだな…あのご夫婦はお酒が好きだったよな…ワインを見繕って買ってきてくれないか? 赤がいいな。 ……これで頼む。」 大体の予算を伝えポケットマネーを渡し、檸檬を見送る。 あぁ、後ろ姿もsexyだ。堪らん。

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