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ダンナ達の思惑(7)
その時、地獄の使者のような低い声が聞こえた。
「社長……」
ハッ
「いや、何も思ってないぞ!(嘘)
さ、業務に集中、集中!」
物言いたげな俊樹を振り切り、社長室へ逃げ込んだ。
はぁ、ヤバいヤバい。気を付けなくては。
プルルル プルルル プルルル
このタイミングで誰からだ?
画面には『ニール』の文字が踊っている。
コイツが絡むと碌なことはないことが、最近分かってきた。
「…もしもし?俺は仕事中なんだけど。」
『満ぅ…相談が』
「悪い、来客だ。切るぞ。」
『待ってくれ!』
「無理。」
『じゃっ、じゃあ、LINE!LINE送るから!お願いっ!』
プツッ プーッ プーッ プーッ
問答無用の切断。
どうせ俊樹と喧嘩した、とか、ご機嫌を損ねた、とか、その類の“相談”だろ。
そんなことに構ってる暇なんかない。
無視だ、無視。
と、ピロピロリンと着信があった。早っ。
アイツ余程暇なのか?社長だろ?
思わず開いてしまった。
「んぁっ?何だ、これ?」
『なぁ、俊樹にどれが似合うかな。
俺的にはこっちの白いヤツだと思うんだけど。』
画面の下には、あろうことか、ヒラヒラのついたカラフルなレースの下着のカタログが添付されていた…
あぁ、ニール、お前もか……
禁断の扉を叩いた奴が、もう1人いた。
[そんなもん、自分で愛を込めて選べよっ!
他の男と選んだと知ったら、俊樹は怒り狂うぞ。ばーか!]
タタタタタン!と指を踊らせ、即返信した。
そして
[そんな超プライベートなことを俺達に相談するなっ!!!
これがバレたら速攻“サヨウナラ”されるぞ!]
と追加で送信した。
送った途端に鳴り響く着信音。
速攻でマナーモードに切り替える。
俊樹の名誉のためだ。見て見ぬフリを決め込んだ。
ニールよ、いい加減に日本人の奥床しさを学べ。ましてや俊樹はそういうことに免疫がないんだ。
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