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ダンナ達の思惑(11)
ヒューッ♪
予約の品を確認したニールが口笛を鳴らした。
調子に乗るなよ、と睨みつけるが、もうニールの頭の中は俊樹が着せ替え人形と化しているのか、口元が緩んでいる。
『社長っ!外ではキチンと!だらしない顔しないで下さいねっ!』
俊樹の罵声が聞こえたような気がして、俺も緩んだ頬を引き締めた。
俊樹、巻き添え食らわして、ゴメン。
でもこれは不可抗力だからな。
一瞬、般若になった俊樹の顔が浮かんだが、目の前の咲き乱れる花々に掻き消された。
誰も喋らない。異様な空気。
真剣勝負とはこのことを言うのか。
ラッキーなことに、3人とも好みが違うのか、手に取る物は取り合いになりそうになくて、ホッとした。
うっほぉーっ!テンション上がるぅ!
檸檬にはどれが似合うだろう!?
ピンク系もそそるんだよな。
俺は、大体のイメージを膨らませて(妄想して)、カタログやネットで色々とチェックして来たから、気に入った物を見つけるのは容易かった。
そして、それらを確実に籠に“仕留める”と、少し余裕ができて、周囲を見回した。
アイツら、どんな顔して選んでるんだろう……
赤石は慎重派だ。
ぶふっ……アイツのあんな真剣な顔、仕事に集中している時以外見たことがない。
丁寧にラッピングされた品物を表から、ひっくり返して裏から。
あー、透かして見てやがる……
アイツの頭の中も、ヨメが着せ替え人形か…
じっくりゆっくりとターゲットを定めてロックオン!
遥さんに素材やら着け心地やら、熱心に質問している。
そこまでするか?遥さん肩が震えてるぞ?
そうか、赤石はやっぱり“むっつり”だったんだな。
ニールは、気に入った物をポイポイと籠の中に入れてご満悦だ。
一体、何枚買う気だ!?そんなに買って…大丈夫か!?
あー…俊樹は、絶対脳内で着せられては脱がされている。
お前、そんな大量の下着見せたらドン引きされるぞ。
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