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ダンナ達の思惑(12)

…俺達の闘いは、無事に幕を下ろした。 それぞれに気に入った物を籠に満載し、3人とも財布からブラックカードを取り出して会計を済ませる。 遥さんは手際良く、全て新しい袋に詰め替えて、俺達の希望通りのラッピングをしていく。 「わざわざ外側のビニール袋も詰め替えるんですか?」 俺がそう尋ねると、遥さんはさも当たり前だというように 「ええ、勿論です。 いくらお身内が触れたとはいえ、直接身に付ける物ですし、できるだけ美しい状態でお相手にお届けしたいので…」 「成程…流石遥さんだ。」 「いえ、とんでもない。 あ、こちらは旦那様方に私からプレゼントです。 肌に柔らかくしっくりきて、穿き心地も良いので是非ご利用下さいね。」 と、正方形の白い箱も入れてくれた。 「ありがとうございます。」 「おっ、賑やかですね!いらっしゃいませ。ようこそ! いつもご利用頂きありがとうございます。 お気に召した物はございましたか?」 「隼人さん!こんにちは。こちらこそ! 今日は赤石と、こちらは悪友のニルス・アンダーソン・透。 みんな存分に堪能させていただきましたよ。 ありがとうございました。」 「初めまして、ようこそ! 私はこちらのオーナーの橘隼人です。 以後、よろしくお願いいたします。」 「こちらこそ初めまして。 いやぁ、楽しかったです! 色々と勉強させていただきました。」 なーんて、隼人さんとニールとで名刺交換が始まり、和やかに会話が弾んでいる。 あー、これはもう、結婚式確定だな。 絶対出席させてもらおう。 遥さんと俺と赤石の3人は、その後の結婚生活のことやら仕事のことやらで盛り上がった。 ここに来ると、本当に勉強させてもらえる。 接客ひとつとっても、どうしたら相手が嬉しくなるのか、どうすれば自分の商品を気に入ってもらえるのか、遥さんを筆頭に従業員達からもひしひしと伝わるものがある。 それは、赤石も同じように感じているようだった。

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