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ダンナ達の思惑(20)
「はい、お気を付けて。
お義父 様達によろしくお伝え下さいね。
あ、何か手土産を…お出掛けまでに用意します!」
「気を遣わなくてもいいよ。
どうせろくでもない頼み事に違いないから。
聡子さんからも溜まった小言が降ってきそうだし…あんまり気が進まないんだけど…まぁ、仕方ないか。」
「やっぱり何か見繕って来ます!
勿論、聡子さん達にも。午後から少し出掛けてもいいですか?」
「そうか?悪いな…じゃあ、お金を渡すからそれで何か適当に頼む。
檸檬、お前は流石に気が利くな。
俺も何かと助かるよ。ありがとう。」
褒められた上に、信号待ちでにっこりと微笑まれて赤面する。
夕べ感じたモヤモヤが少し晴れていく。
俺って単純。こんなことでモチベーションが上がっていくなんて。
うーん、何がいいだろう。聡子さん達は勿論のこと、ああ見えてお義父さんは甘党だし…最近できた和菓子のお店に行ってみようかな。
タタタッと携帯をタップしながらあれこれ考えているうちに、会社に着いてしまった。
黒原さんにも相談して昼休みにでも考えよう。
満さんの先に立って、社長室のドアを開けた。
「おはようございます!…って…黒原さん、何処か具合でも悪いんですか?
目の下…クマができてる…」
「おはようございます…えっ!?そんなに酷い!?…マジか…」
「おはよう俊樹。ホントだ。どうしたんだ?」
「いや、その…読んでた本が余りに面白くて、完徹してしまって…」
「そんな面白い本、どんな本だ?」
「え…心理学の本。交渉に役に立つかと思って…」
「仕事熱心なのはいいけど、翌日の業務に差し障るような読み方は控えた方がいいな。
暫く“温冷シップ”しておけよ。
それと、俺は本家に呼び出されたから16時にはここを出る。
手土産を檸檬に頼んだし、午後から買い物に行ってもらうので、よろしく。」
「承知いたしました。」
黒原さんはいつもの黒原さんだった。
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