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ダンナ達の思惑(21)
いつもの、普通の業務が始まった。
でも…いつも通りに振る舞っていても、何となく違和感がある。
それは俺もそうなんだけれど、目の下にクマを作ってる(今は目元を温めたり冷やしたりしている)黒原さんも…気のせいかな。
きちんと自己管理して節制してる黒原さんにしては珍しいこともあるもんだ。
ちょっと相談してみようかな…
いや、何でもかんでもプライベートなことを持ち掛けられたら、流石に温厚な黒原さんでも嫌気がさすだろう。
それも、アッチ関係の話だ。伝える俺も恥ずかしいけれど、聞かされる黒原さんも絶対気不味いよ。
気のせいかもしれないし、満さんもお疲れなのかもしれないし。
やたらと他人様 を巻き込むのも良くないよな。
うんうん、と自己完結してパントリーに行きコーヒーをセットすると、忽ちいい香りに包まれる。
あー、癒される…
檸檬、少し落ち着け。今は仕事中だ。
そんなことより、手土産の相談の方が先だ!
今まで届けた物は全部控えてるし、その感想も聡子さんからリサーチ済みだ。
やっぱり目新しい物の方がいいよなぁ…
俺はトレイに乗せたコーヒーを満さんの元に運ぶ。
「社長、失礼いたします。」
「どうぞ……ありがとう。」
はぁ…書類を見る姿もカッコいい…ハッ、仕事中だ、仕事中。
そそくさと社長室を後にして、身じろぎ一つしない黒原さんの前にカップを置く。
「黒原さん、コーヒーここに置きますね。」
「あー…檸檬君、ありがとぉー…ダメだぁ…完徹なんてするもんじゃない…学生の時は何日でも平気だったのに…年には勝てない…ううっ…」
「年だなんて…まだまだですよ!
あの…本家にお届けする手土産のことで、後で相談に乗っていただきたいのですが…」
「うん、分かったよ。
最近奥様は和菓子にハマってるらしいから…そっち系の物がいいかもね。」
「じゃあ、最近できたお店のはどうでしょう?
準備しますから落ち着かれたら見て下さい!
あ!暫く休んでて下さいね!」
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