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ダンナ達の思惑(22)

午前中の黒原さんは、あり得ないくらいに使い物にならなかった。 上司に対してその物言いはどうかと思うが、パソコン作業の途中でふっと手を止めて、ため息をついて涙ぐんだかと思えば、立ち上がって歩き出した途端に躓いて転ぶ始末。 ちょっと擦りむいた手の平に絆創膏を貼りながら、僭越ながらも説教してしまった。 「黒原さん、後は俺がやりますから早退してご自宅でゆっくり休んで下さい! どう見ても体調崩しまくりです!」 「ううっ…俺も自分がこんなにポンコツだとは思わなかった…情けない… たった一晩寝れなかっただけなのに… でも、早退はしないっ!」 「もう…もっと自分のこと大切になさって下さいねっ! 早退されないなら、どうかそちらのソファーで休んでて下さい! ほら、早く!」 無理矢理パーテーションの奥に連れて行って、ソファーに転がすように寝かせ、毛布を掛けた。 「うーっ…檸檬君、ごめん…」 「後はお任せ下さい! ぜーったい、動かないで下さいねっ!!」 これじゃあ手土産の相談どころではない。 さっき、お義母さんが和菓子にハマってると言ってたから、そっち系で見繕うとしよう。 今日の俺の急ぎの予定は手土産の買い物だけだし、社長も夕方出掛けなければならないから来客はシャットアウトしよう! 受付へは内線ではなく、直接お願いに行った。 でも、黒原さんどうしたんだろう。 読書で完徹したくらいであんなになっちゃうなんて。 ……まさか、またニールさん絡みか!? いやいや。 あそこは色々あったけど、安泰のラブラブっぷりだ。 ベタ惚れのダンナ様が黒原さんに振り回されていると聞いている。 うーん、とにかく睡眠が必要なら静かに寝かせてあげよう。 外出ついでに何か美味しいものでも買ってきてあげよう。 単純な俺はそう納得したのだった。

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