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ダンナ達の思惑(23)
俺が予定を早めて、昼少し前に買い物に出掛ける時も、黒原さんはぴくりとも動かず、毛布に丸まっていた。
本当に大丈夫なんだろうか。
家でゆっくりと休んだ方がいいんじゃないか。
声を掛けようとしたけれど、起こすのも悪いので何も言わずに部屋を出た。
何か口当たりの良い物を買って帰ろう。
目当ての和菓子屋さんは、行列ができていたからすぐに見つかった。オープンしたばかりなのに、流石に人気店なんだ。
順番が来て、日持ちのしそうなものと生菓子と、それから聡子さん達用にも一箱包んでもらった。
思っていたよりも見目も良くて、美味しそうなものが買えた。
それと、パフェグラスに入った綺麗なゼリーも買った。これなら黒原さんも食べれるだろう。
黒原さん、もう起きてるかな…
「ただいま帰りました…」
小声でそっとドアを開けると
「檸檬君!ごめんっ!いやぁ、情けない上司でごめんよぉ〜!」
と、黒原さんが飛んできた。
顔色は…随分良くなっていた。
「いえ!もう起きても大丈夫なんですか!?
今朝よりは顔色も良さそうですけど…」
「寝たらスッキリした!はぁ…自分が思う程、若くはないんだなぁ。無理が効かないなんて。
何だかショックだ……」
「あ、これは、俺達のおやつです!
アドバイスいただいて、お土産は和菓子にしてみました。最近できた所で、凄い行列でしたよ。
喜んでいただけたら良いのですが…」
「やったぁ!ありがとう。後でお金渡すね。
そうだ、メッセージカードにひと言添えるといいね。
御隠居達きっとお喜びになるよ。
はい、これ。この中から選んでね。」
いつもの黒原さんに戻っていて、取り敢えずホッとした。
満さんも交えて、遅いお昼ご飯を食べ終わる頃には、黒原さんは“クールビューティー黒原”を完璧に取り戻していた。
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