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してやったり(1)

side:満 背中に感じた檸檬の縋り付くような視線。 [満さん、もう行っちゃうの?1人で寝ちゃうの?] まるで捨てられた子犬のように思えた。 自分からは絶対に俺の負担になるようなことは言ったり行動したりしない檸檬。 檸檬、ごめん。意地悪してるつもりじゃないんだけど。 いやいや、これ、絶対意地悪だよな。 疲れているのは事実なんだけど。 寝室のドアを閉めた瞬間、罪悪感に襲われた。 あああっっっ!抱きしめたい。 キスしたい。 押し倒して身ぐるみ剥いで愛したい。 止めどない欲望を必死で押し込めて、布団に潜り込んだ。 キスしたかったのに我慢して頭も撫でただけ。 普段通りに接したつもりだ。 それなのに。 物言わぬ檸檬の哀しげな視線が俺の心を抉る。 こんな思いまでして『明日』に備えなければならないのか!? はてさて、そこに何の意味があるんだろう。 『予定のない週末だから、翌日のことなんて考えずにたっぷりと愛しあえるから』 『少しつれない態度を取れば、その分檸檬が俺を求めてくれるかも』 『不安を煽ればもっと甘えてくれるかも』 なんていう単純な理由で、愛情の寸止めをしてしまっている。 それに、買ってきた下着を抵抗なく檸檬に着けさせようと画策して……馬鹿だなぁ、俺。 檸檬は今どうしてるんだろう。 片付けを終えたらすぐにこちらに来るはずなんだけど…カチャカチャと言う食器を洗う音が途絶えて随分と時間も経っているんだが… 檸檬が来ない。 痺れを切らして起き上がろうかと思った時、ドアを開ける微かな音がした。 慌てて背中を向けて寝たフリを決め込む。 俺が疲れて寝ていると思っているのか、檸檬は音を立てずに忍び足でそっと近寄って来た。 するりと布団に入ってきた檸檬は、俺の背中にこつんと頭を当てると 「満さん、遠距離の運転もお疲れ様でした…オヤスミナサイ…」 と呟いた。 すぐに背中の温もりが失われて、檸檬が俺と距離を取ったのを悟った。

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