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してやったり(2)
その仕草のかわいらしさに、暫く気の抜けたようにぼんやりしていた。
あっ、と思った時には、背中越しに小さな寝息が聞こえてきて、檸檬が眠ってしまったことに気付いた。
しまった!
ゆっくりと反転して、薄暗い中で目を凝らすと、規則正しく肩が上下しているのが見えた。
あぁ…ひょっとして、俺は檸檬を傷付けてしまっているのではないだろうか?
自分勝手な欲望のために、純粋な檸檬の心を弄んでいるだけでは?
胸に、きゅうっと苦い思いがせり上がってきて、俺は堪らず布団越しに檸檬を抱き込んだ。
「…んっ……うわぁっ!!!何!?満さんっ!?どうしたの?」
「…すまない、暫くこのままで…」
「…ハイ…」
じわじわと檸檬の温もりが伝わってくる。
檸檬からは戸惑いの空気が流れてくる。でも、その中に俺を愛おしいと思ってくれるものも含まれている…と思いたい。
檸檬はぴくりとも動かない。
ただ、小さな呼吸を繰り返して、俺のなすがままにじっと抱かれている。
俺は布団越しの檸檬を感じて、手を出そうかどうしようか、迷っていた。
どうしよう。
このまま布団を跳ね上げ、着ている物を剥ぎ取って、檸檬の中に滾 る俺の熱を注いでしまおうか。
ああっ、でも…明日になったらもっとたっぷりとねっとりと、愛し合える…はず…
今夜の俺は、明日のお楽しみの方が勝った。
何たって、アレだよ、アレ。
どれだけ汚しても着替えは山程あるんだ!
むふむふむふ。
「…檸檬、すまない、お休み。」
「…ハイ、オヤスミナサイ…」
俺がため息をつくと、檸檬は微かにぴくりと身震いした。
のし掛かった体重を緩め、元の位置に戻る。
檸檬は…動かない。
だが、その時に檸檬が心を痛めていたことなんて、全く気付いていなかった俺は馬鹿だったんだ。
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