288 / 371
してやったり(3)
side:檸檬
吃驚した。
眠っていたと思っていた満さんに、突然布団越しにのし掛かられた。
いつものクールな香水が、ふわりと鼻腔を擽る。
ひょっとして。
ひょっとして、今から抱かれる!?
ちょっと待って。心の準備が…まだできていない。
でもでも。満さんの熱を感じたい。
はっきり言って、満さんが…欲しい…
うっわぁー。大胆な。引くわ、俺。
でもだって、甘えたいんだ、俺。男だってそんな時だってあるだろ?
会いたくて早く帰って来てほしくて、ずっと待ってたんだから。
ましてや、今、大好きなダンナ様が俺を抱きしめてるんだよ!?
ソノ気にならない訳はない。
ドキドキしながら待っていたのに。
満さんはいつまで経っても手を出してこない。
あれ?
やっぱりお疲れなのかな?
どうしたんだろう……俺は身じろぎ一つせず、じっと待っていた。
それなのに。
大きなため息とともに落ちて来た言葉は…
「…檸檬、すまない、お休み。」
「ハイ、オヤスミナサイ…」
としか返せなかった。
何でため息!? ため息をつかれる程、嫌になった!?
まさか、俺を抱くの、嫌で萎えちゃった!?
いやいや。俺達は新婚さんだよ!?
俺は満さんのこと大好き過ぎて…あいしまくってるんだけど…
満さんはそうじゃなくなった!?
嘘だ…………
何だかショックで、目が冴えてしまった。
満さんは…元の位置に戻って…寝ちゃったのか…
ピッタリとくっ付いて眠りたいのに、側に行けない。
身体が動かない。
向けられた背中が、俺を拒否しているように見えて。
俺はそっと布団を抜け出した。
それでも満さんは起きてこない。
きっと疲れて寝ちゃったんだね。
足音を立てないように静かに部屋を出た。
マグカップにミルクを入れてレンジで温める。
バザーが鳴り響く前に取り出して、インスタントコーヒーと砂糖を少しだけ混ぜた。
部屋の電気を消してカーテンを少し開けて、ソファーにもたれた。
ともだちにシェアしよう!