289 / 371
してやったり(4)
明日は天気なのかな。
都会の灯りに遮られて星は全く見えない。
きっと空気の綺麗な所に行けば、満天の星が見れるんだろうな。
俺…輝いているんだろうか。
何の取り柄のない普通の、それも男が。
満さんみたいな地位も名誉もあって、イケメンで、性格も良くって、スパダリそのものが生きているようなひとと結婚して…
満さんの目から見て、俺はキラリと輝いて見えてるんだろうか。
手を出してもらえないくらいにレベルが落ちてるんじゃないか。
いやぁ、元々そんなレベルにある訳じゃあない。
それでも、満さんを真剣に愛している。
この気持ちは誰にも負けない。負けるわけがない。負ける気がしない。
これだけ自信満々なのに…
マグカップに口を付け、ひと口啜った。
「熱っ」
少し火傷したかもしれない。ほろ苦いカフェオレの香りが、口の中に広がる。
ほの明るい空を窓越しに見上げて呟いた。
「満さん……」
布団越しじゃなくて、ぎゅううっ、って抱きしめて欲しかったなぁ。
満さんの熱が直接触れるように。
吐息が俺の顔に当たるように。
そうだ!
明日は金曜日だし、今週末は仕事もプライベートも何の予定も入れていないはず。
夜、少々無茶をして起きることができなくても、何の支障もない。
余分におかずも作っておけば、満さんが食事の支度をしなくても済む。
うえぇぇーーーっ……どうして抱き潰されること前提で考えているんだ?
今まで、自分から求めていく、なんてほぼほぼなかった。けど、今の俺はちょっとおかしい。
自分の心も身体も持て余している。
挙げ句の果てに寝付けなくて、こうして1人で膝を抱えている。
やだな、こんなの。
もっと素直になりたいな。
満さんはきっと、どんな俺でも受け止めてくれるんだろうけど…
ふぅ…とため息をついては、ひと口啜り。
カフェオレは冷めて飲み頃になっていた。
ともだちにシェアしよう!