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してやったり(4)

明日は天気なのかな。 都会の灯りに遮られて星は全く見えない。 きっと空気の綺麗な所に行けば、満天の星が見れるんだろうな。 俺…輝いているんだろうか。 何の取り柄のない普通の、それも男が。 満さんみたいな地位も名誉もあって、イケメンで、性格も良くって、スパダリそのものが生きているようなひとと結婚して… 満さんの目から見て、俺はキラリと輝いて見えてるんだろうか。 手を出してもらえないくらいにレベルが落ちてるんじゃないか。 いやぁ、元々そんなレベルにある訳じゃあない。 それでも、満さんを真剣に愛している。 この気持ちは誰にも負けない。負けるわけがない。負ける気がしない。 これだけ自信満々なのに… マグカップに口を付け、ひと口啜った。 「熱っ」 少し火傷したかもしれない。ほろ苦いカフェオレの香りが、口の中に広がる。 ほの明るい空を窓越しに見上げて呟いた。 「満さん……」 布団越しじゃなくて、ぎゅううっ、って抱きしめて欲しかったなぁ。 満さんの熱が直接触れるように。 吐息が俺の顔に当たるように。 そうだ! 明日は金曜日だし、今週末は仕事もプライベートも何の予定も入れていないはず。 夜、少々無茶をして起きることができなくても、何の支障もない。 余分におかずも作っておけば、満さんが食事の支度をしなくても済む。 うえぇぇーーーっ……どうして抱き潰されること前提で考えているんだ? 今まで、自分から求めていく、なんてほぼほぼなかった。けど、今の俺はちょっとおかしい。 自分の心も身体も持て余している。 挙げ句の果てに寝付けなくて、こうして1人で膝を抱えている。 やだな、こんなの。 もっと素直になりたいな。 満さんはきっと、どんな俺でも受け止めてくれるんだろうけど… ふぅ…とため息をついては、ひと口啜り。 カフェオレは冷めて飲み頃になっていた。

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