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してやったり(6)

眠りが浅かったのか、アラームよりも随分早く目覚めた。 頭がぼんやりする。スッキリした目覚め方ではない。 首元に柔らかな寝息が当たり、胸元には満さんの大きな腕があった。 あのまま抱いてくれてたんだ…胸がキュッと締め付けられるような感じがして、泣きそうになり、一気に体温も上昇する。 どうしよう…動いたら満さんが起きてしまう。 でも、このまま満さんを感じていたい。 時間はまだ早い。 俺は全身で感じる満さんの存在から離れることができずにいた。 ピピピピピ どうしよう、どうしよう、と思っているうちにアラームが鳴ってしまった。 俺より先に反応した満さんがそれを止め、少し掠れた声で囁いた。 「檸檬、おはよう…あれから眠れたのか?」 「…おはようございます。大丈夫です。」 「そうか、それなら良かった。」 「俺…ご飯の支度してきます!」 満さんの身体が離れた隙に、そう言い逃げして部屋を出て来てしまった。 シンクに両手をつくと、大きなため息が出た。 まだ満さんに包まれている感覚がする。 あの温もりが欲しくて、思わず両手で自分の身体を抱きしめる。 服の中の空気が動いて、ふわりと満さんのフレグランスの香りがした。こんなに染みつくほど密着していたんだろうか。 まだ全身を満さんに抱え込まれているような気がして、そっと目を閉じた。 頸に感じた満さんの少し熱い吐息を思い出して、ぶるりと身体が震えた。 「あ……」 シンクの縁に、緩く勃ち上がった自分自身が当たったのに気付いてしまった。 ヤバい。 幾ら自然現象とはいえ、ちょっと気不味い。 …幸い満さんはまだ起きてこない。 俺はそっとトイレに行くと、声が漏れないように片手で口を押さえ、抱かれる自分を想像して…抜いた。

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