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してやったり(8)
side:満
檸檬を抱きしめたくてキスしたくて、犯しそうになるのを鋼鉄の理性で抑え込んでいた。
違和感ありあり。
手を出したくなるのを敢えて我慢して、クールに立ち振る舞っていた。
そんな俺の行動に、檸檬が動揺している。
何か訴えている瞳は言葉にならず、もどかしそうに口を開きかけてはつぐんでしまう。
まるで愛らしい小動物が、ぷるぷると震えてじっとこちらを見つめている、そんな風にも見えた。
予想の遥か上をいくその行動に、俺は『檸檬に悪いな』と思いながらも、嬉しくて堪らなかった。
俺のことを気にして愛して構ってもらいたいのに、それを我慢して健気に振る舞うその姿に、身悶えしそうになるのを必死で堪えていた。
そんなに態度に出る程、檸檬の心は俺で一杯なのか。
ううっ、俺のヨメはかわい過ぎるだろ!?
愛されてるなぁ、俺。
一生離さないから覚悟してろよ。
心はスキップどころか舞い上がって何処かへ飛んでいきそうなくらいに高揚しているのに、ポーカーフェイスを崩さない。
偶には俺がツンでデレてもいいじゃないか。
落差があった方が燃えるだろ?
上手い具合に本家からの呼び出しもあった。
そう大した用事ではなかったのだが、物理的にも『離れる』のは、新たな化学反応を起こす。
案の定、檸檬は甘えたそうだったけれど、敢えて放っておいた。
夜中、ふと目が覚めた…隣で寝ているはずの檸檬がいない!
慌てて飛び起きてリビングへ行くと、膝を抱えて外を見ている檸檬を見つけた。
眠れないのか?
身体も冷えてる。
マグカップを取り上げて、早くベッドにくるように促した。
檸檬は…中々やって来ない。
一緒に連れて来てやれば良かったのか?
悶々としていると、やっと檸檬が戻って来た。
背中にひやりと感じた檸檬の身体は、遠慮しているのか少し距離を取って離れた。
我慢できなくなってこの胸に抱え込む。
はぁ…この抱き心地、この匂い。サイコー!
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