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してやったり(9)
もうすっかり俺の身体の一部と化した檸檬を抱きしめて、妄想に耽る。
明日の夜は定時でサッサと上がり、そのまま外食して家に連れ帰り、あとは…これまでお預けにした分、たっぷりと甘やかしてたっぷりと愛して…あぁ、アレも忘れてはいけない。何着も檸檬に着せ替えて楽しまなければ。
檸檬の匂いを嗅いでいるうちに反応してくるバカ息子を何とか気を散らして大人しくさせた。
ふぅ……お楽しみは明日だ。
お預けを食らった分だけ楽しみは倍増、いや、その何倍にも膨れ上がる。
ひとりワクワクしながら夢の世界へと旅立ったのだった。
ピピピピピ
スッキリと目覚めた俺は、元気良くアラームを止めた。
いつもは檸檬に起こされないと起きないのに(起こしに来るヨメの反応を見るのが朝から楽しみで止められない)、夕方まで時間がすっ飛べばいいのに、と願いながら出社した。
檸檬は…元気がないように見えるのは気のせいか?夕べ夜中に起きていたから寝不足なんじゃないか?
黒原に言って、ハードワークは遠慮させておこう。
……むぅ…何かいつもの檸檬じゃない。
その小さなため息はどうしたんだ?
お前を悩ませているのは何なのだ?
気になりつつも社長室のドアを開けた…
「黒原、頼みがあるんだけど。ちょっと来てくれ。」
「はい、ただいま。」
俊樹と2人っきりになってから徐ろに頼みごとをする。
「なぁ俊樹。今日、檸檬の具合が余り良くなさそうなんだ。
定時で連れて帰るから、仕事減らしてやってくれないか?」
「…やはりそうですか…瞳に元気がなかったので気になってたんです。
今日の業務は私1人で大丈夫ですよ。風邪の引き始めかもしれませんし、早退したほうが…
でも、余り構うと逆に気を遣う子なので…上手いこと言って帰宅させた方がいいかも。」
「どうすればいい?」
うーん…と暫く俊樹は思案していた。
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