299 / 371
してやったり(14)
「何でもない、か…」
何でもないのにこんな豪華なプレゼントする時って…
そうだ、誰かのブログで読んだことがある!
《やましいことがある時》
“やましいこと”って何だーっ!?
満さんは、俺に隠し事してるってことか!?
黒原さんも知らない、いや、ツーカーのあの人達のことだ、知ってるに違いない。
俺は美しく咲く花のセロファンに貼られたシールと、ケーキのパッケージを見ながら、あることに気付いた。
この花屋は、黒原さんが特にお気に入りでよく利用するから、店員さんもこちらの無茶振りを結構聞いてくれる。当日の注文でも嫌な顔をせずに対応してくれるのだ。
このケーキは…一昨日だったか、黒原さんと偶々気になるスイーツの話をしていたときに、『俺が気になる店』として話題を振っていた所のやつだ。
ということは…
満さんに頼まれた黒原さんが手配したに違いない。
一体何を隠そうとしているんだろう。
あぁ、考え出したら本当に頭痛がしてきた。
本格的に寝込む前に鎮痛薬を飲み、ザッとシャワーを浴びた。
布団に潜り込むと、段々と眠くなってきた。
とにかく眠ろう。せっかく休みをもらったんだ。荷物の受け取りもしたし、満さんが帰るまでにはまだ時間がある。
ハッ
何故か突然、クローゼットのあの中身のことを思い出してしまった。
あんな大量のアレ……
まさか、アレを俺以外の他の誰かのために買ったんじゃないんだろうか…
もう一度見に行こうか、どうしよう。見てどうなるものでもないんだけど。
でも、もう身体に力が入らない。
頭がグルグルする。
“浮気”“捨てられる”“離婚”なんて物騒な言葉ばかり浮かんでは消えていく。
「…もう、嫌だ…」
ぽそりと口にしたら、もう歯止めが効かなくなった。体が弱ってる時には、思考力も停止する。段々と悪い方へ悪い方へと傾いていく。
ともだちにシェアしよう!