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してやったり(15)
…どのくらい寝てたのだろう。
頭痛は…良かった、治っていた。
目を覚ました時には、カーテンの向こうからは夜の色が顔を覗かせていた。
嘘、何時!?
腫れぼったい目を擦り時計を掴むと、デジタルの数字は18:45を表していた。
「あっ、晩御飯っ!」
慌てて起き上がり、ドアを開けた俺の目に、キッチンに立つ満さんの姿が飛び込んできた。
「満さんっ!」
「あ、檸檬ただいま。ここはいいから寝てろ。
まだ顔色が良くない。」
「でも」
「できたら運んでやる。俺の言うことを聞きなさい。」
有無を言わさぬ強い口調に怯んでしまった俺は、すごすごと寝室に舞い戻った。
再び潜り込んだ布団はまだ暖かくて、不甲斐なさに泣きたくなった。
満さん、いつの間に帰ってきたんだろう。全然気配に気付かなかった。ここに、立ち寄らずに支度を始めたんだろうか。
きっと疲れて帰ってきたのに、俺が何もできてなくて…挙句晩ご飯を作らせてしまってる。
自己嫌悪で悶々としていると、かちゃりとドアが開く音がして満さんが入ってきた。
「檸檬、起きれるか?
お前の具合が悪いのに気が付かなくて済まなかった。これ食べたらまたゆっくり休むといい。」
「…ゴメンナサイ…あ、お花とケーキ、ありがとうございました。」
「どういたしまして。ほら、食べれるだけ食べて。」
「ゴメンナサイ……あの、満さん…」
やっばり聞かなくちゃ!俺、スッキリしたい!
「ん、どうした?」
「…どうして…どうしてプレゼントなんか?
何の記念日でもないのに…俺に何か隠してることでもあるんですか?
ハッキリ言ってもらった方がいいです!相手、どんな人ですか?
俺、覚悟はできてますから!」
「隠してること?相手?覚悟?…檸檬、何の話だ?」
訝しそうな満さん。
まだ俺に隠そうとするのか……
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