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してやったり(17)
今度は俺が間抜け顔をする番だった。
「…………ちょっと待って…浮気じゃないの?
アレ全部…俺の?
週末のためにワザと冷たくしてたってこと?
…プレゼントも黒原さんセレクトだとは思ってたけど、単に俺を喜ばせるため??
……訳分からない……俺は、俺はてっきり…」
「俺が愛してるのは檸檬だけだって知ってるだろ?
何処をどうやったら俺が浮気してることになるんだよ…
あっ!!!
……お前の具合が悪くなってた原因は『俺』だったのか……ゴメン、檸檬…
俺の態度のせいで、余計な心配掛けて不安な気持ちにさせてたのか……
追っ掛ける方が燃える、って言うし、少しツンをデレにしたくって…思いっ切り甘えてほしくて…ただそれだけの単純な理由で……ああっ、体調を崩す程悩ませて、本当に悪かった!ゴメンナサイっっ!!!」
満さんは俺の足元に這いつくばった。
「本当にごめんなさいっっっ!!!!!」
お手本の様な美しい土下座である。
俺はキャパオーバーで、ヘナヘナとその場に座り込んだ。
「檸檬っ!」
満さんの逞しい腕に支えられ抱きしめられる。
久し振りの感触。慣れた体臭と温もり。
抱かれているうちに、何だかおかしくなってきた。
「…くっ…くっ…ふふっ、ふっ、あははっ……ぐっ…うっ、うっ…ぐっ…ぐすっ」
笑い声は段々と泣き声に変わっていった。
俺を抱く満さんの腕の力が強くなった。
満さんはしっかりと俺を抱え直すと、耳元で『ゴメン』と『愛してる』を繰り返し囁く。
俺は俺で、声を押し殺して泣いているから、段々頭も痛くなってきた。
何だ。満さんに、まんまとしてやられたのか。
そうだよ。嫉妬して妄想して身体もおかしくなるくらいに、あなたのことを愛しているんです。
酷いよ。俺を試すようなことをして。
下着くらい…ちゃんと着けるって言ってあるじゃないか…あの枚数は引くけど。
何でもないのに贈り物なんてしないで…嬉しいけど。
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