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してやったり(19)

俺は無言を貫く。 焦れた満さんが俺の右手を捧げ持って、手の甲にキスをした。 「檸檬を抱きたい。」 真っ直ぐに真剣に見つめられて、胸がキュン、とした。 考えは何も浮かばないまま身体が勝手に動いていて、満さんに抱きついた。 「…アレ、俺のためなんでしょ? 満さんが好きなの…着せて…」 抱きついた満さんの身体がぶわりと熱くなり、顔が真っ赤になっている。 「…檸檬…お前って…もう、サイコーっ!!」 満さんは俺にキスをすると、飛び跳ねるようにクローゼットのドアを開け、暫くガサゴソと漁るような音が聞こえていたが、その音がピタッと止んだと思ったと同時に布団がめくられた。 「檸檬、今夜はコレとコレとコレ♡」 ん?コレとコレとコレって…3種類? 満さんは、透明なビニールでラッピングされたピンクとブルーと黒のそれらをトランプのカードみたいに顔の前で広げた。 しゅるりと解かれたリボンがひらひらと落ちていった。 ドクン ドクン 心臓が飛び出しそうだ。 俺は…とんでもないOKを出してしまったのではないか… 後悔先に立たず。 「最初は…コレだな。」 中から現れたのは、レースがヒラヒラの淡いピンク色のショーツと…かろうじて“布”がついたビキニらしきモノ…… 満さんは 「はい、檸檬。足少し上げて…そうそう。ううっ、堪らんっ…上も…うほっ、コレ着けてる方がヤラシイっ…はあっ…綺麗だぁ…」 等と大きなひとり言を言いながら、俺に着せていく。 目の前にぶら下がる『ミツルサン』はもうMAXに近い。 こんな下着の何処にツボるんだろう。 遥さん…俺、ちょっと恨むかも。 ちょっと待って。 『コレとコレとコレ』『最初は』って…何か恐ろしい台詞が聞こえたような…3種類って、まさかのまさか、3回ヤる、ってこと!? いやいやいや。無理です、無理。絶対無理。

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