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跡取り、見参!(1)
同性の俺達には子供は授からない。
金山家クラスの由緒正しいお家柄なら尚更のこと、そのことが親戚一同のネックになっていたが、遠縁の親戚から養子を迎えるということで、折り合いがついていた。
彼は大学もこちらに無事決まり、学業に専念しながら満さんの後継者としての勉強を徐々にすることになっている。
そのことは前々から満さんから聞いていたが、ついに対面の日を迎えた。
「満さん、好き嫌いないって聞いてたけど、これでいいかな?
一応、若い男の子が好むメニューにしたんだけど。」
「檸檬、凄い!本当に美味そうだ。ありがとう。手間を掛けさせて済まなかったな。
俺一人で全部平らげたいくらいだよ。」
「ふぅ、良かった…満さんに褒めてもらえたらなら合格ですね。」
「檸檬…」
抱き寄せられ、顔が近付いたその時
ピンポーーーン
「あっ!もう到着!?」
するりと満さんの腕から抜け出すと、慌ててインターホンのボタンを押した。
背後で満さんの舌打ちが聞こえたけど、無視。
「はい!」
『こんにちは、初めまして。金山 吹雪 です。
よろしくお願いいたしますっ!』
「お待ちしてました。どうぞ!」
ロック解除のボタンを押すと、彼は画面の向こうで一礼して消えた。
めっちゃ礼儀正しいじゃん。
いい子そうで安心した。
ちょっと…満さんにも似ているような気がする。
暫くして玄関のインターホンが鳴った。
「はい、どうぞ…ようこそ!」
「お邪魔します!あの…これ、檸檬さんに…」
「えっ!?俺に!?…ありがとう…さぁ、どうぞ。」
玄関先で手渡されたのは、カサブランカやガーベラ、スイートピーなんかが“これでもかっ”と盛られたアレンジの花籠だった。
「満さーん!吹雪君がこれを俺にって!」
結構ずっしりと重みの掛かる籠を抱えて大声で叫びながらリビングに案内すると、余裕の笑みのこの家の主人 が待っていた。
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