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跡取り、見参!(2)
ソファーから立ちあがり、花を抱えた俺を見ると、満さんは目を見張った。
そして、俺の後に続いて入ってきた吹雪君に
「いらっしゃい。檸檬にプレゼントまでいただいてありがとう。さ、どうぞそこに座って。」
と、俺の腰をさり気なく抱き寄せながら言った。
2人の間で、バチバチと視線の火花が散っていたことなんて、その時の俺は全く気付かなかった。
「1人の生活は初めてだろ?少しは慣れたのか?
自炊もできるから心配ないと聞いていたが…偶には誰かが作ってくれた料理もいいものだよ。
今日は、君のために俺の檸檬が腕によりを掛けて作ったんだ。
俺の檸檬は料理上手だからね。
お陰で俺は毎日幸せに過ごしているよ。」
「はい、お陰様で。
新しくできた友人もいい奴ばかりで、バイトも始めました。
実家で小さい頃から手解きを受けたので、家事全般は何でもできますから問題ないですよ。
毎日が幸せなんて…それは羨ましいです。
自分も早く一人前になって、檸檬さんみたいな素敵な伴侶を娶りたいと思ってます。
まぁ、その前に社長に認められるように、しっかりと実力をつけていかなければなりませんが。」
「そうだね。楽しみにしているよ。
…檸檬、どちらが美しい花か分からないじゃないか。
あちらに飾っておこう。」
んん?満さん、急に歯の浮くような台詞、どうしたんだ?
あれ?吹雪君は苦虫を潰したような顔して…
頭の中は“ハテナ”で一杯になったが、2人ともお腹が空いているだろうと思い、気を取り直してスープを注ぎ、皿に取り分けてあげた。
「うわぁ…めっちゃ美味しい!!檸檬さん、本当に料理がお上手なんですね!
すっごい美味しいです!お代わりしてもいいですか?」
「お口に合ったならうれしいよ。
どんどん食べて!」
気持ち良いくらいの食べ方は、流石育ち盛りの男の子だ。
満さんも負けじと頬張っている。
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