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跡取り、見参!(4)
まさか…まさかのヤキモチ!?
養子に迎える身内とは言え、勝手に俺に触れたから……そうか…だから
『無闇矢鱈に他人の伴侶の身体に触れない方がいい。』
と釘を刺したんだ。俺は単なる握手だと思っていたんだけど。
満さん、面白くなかったんだね…
念入りに優しく俺の右手を洗う満さんに、『それくらいで』と呆れると共に、独占欲を剥き出しにされたみたいで嬉しいと思う自分に戸惑っていた。
「満さん…」
「…檸檬、ごめん。
でも、お前は俺のものだ。誰にも触れられたくないし、そういう目で見られたくない。
お前は気付いてなかったと思うが、アイツは…性的な目で…恋愛対象としてお前を見ていた。
それは絶対に許す訳にはいかない。
もしまたそんなことがあったなら、跡取りの話はなかったことにしなければならない。」
「えっ!?まさか………そんな…」
満さんはそれには返事をせず、視線をタオルに落としたまま、優しく拭いてくれた。
そして、俺の手を握ったまま
「ごめん。」
ともう一度呟いた。
俺はぎゅっと満さんに抱きついた。
「檸檬!?」
「満さん…俺、全然そんなこと思いもよらなくて…ちょっと吃驚しています。
俺は、俺は満さんしか見ていませんから。
満さんで一杯なんです。
…それだけは、信じて。」
「檸檬…ありがとう。愛しているよ。」
優しく優しくハグされた。
「俺の檸檬は優しくて綺麗で、他の奴等に気に入られ過ぎる。
お前の気持ちは100%俺に向いていると信じているよ。
でも、好意以上のものを向けられたら、それは絶対に許せないんだ。
…器の小さな男ですまない。殊更お前に関しては、こうなってしまうんだ。」
「満さん…」
申し訳なさそうに眉を下げる俺の夫。
背伸びをして、ちゅ、っと軽いキスを送った。
「れっ、檸檬っ!?」
「ふふっ。そんな満さんも大好きですよ。」
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