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跡取り、見参!(6)

「もう…勝手にヤキモチ焼いて…何やってんですか?…っていうか、俺が仕掛けちゃったんですけどね… とにかく…後片付けがあるから、ダ・メ・で・す。」 「れもぉーーん…俺も手伝うからぁ…」 「満さん、いい子にしてましょうね。」 頭をナデナデしてシンクに向かうと、無言で立ち上がった満さんが背中に覆い被さってきた。 うわぁ…来た来た来た! 妖怪おんぶおばけの登場だ! すんすんと俺の首筋から耳の裏まで匂いを嗅いでいる。 犬かっ!『待て』のできない大型犬。 …仕方ない…このまま洗ってしまおう… 諦めて片付けを始めた。 …腰から回された満さんの手が、泡だらけの皿を俺の手から受け取り洗っていく。 こんなややこしいことしないで、横に来て洗ってくれた方がとっても効率的なのに。 でも、今は何を言ってもどうやっても離れないのは分かっているから、俺も敢えて何も言わないし拒絶しない。 片付けに少し時間が掛かっても、ささくれた満さんの気持ちが落ち着くならそれでいい。 それにしても。 吹雪君が俺をそんな目で見てるなんて、思いもよらなかった。 『檸檬はもっと自分の魅力を自覚して、しっかり危機管理をしてくれっ!』 って、よく満さんに言われるけど、それ程のものとは思ってないから、全く無頓着でいた。 …ひょっとしたら、気配りのアンテナを張り過ぎて…というより、できるだけ穏便に波風を立てないように人付き合いをしてきた俺は、『他人からよく見られたい』という思いが、無自覚に相手の気を引くような態度を取っていたのかもしれない… 100人いたら100人に好かれるなんて、絶対にない。 いい加減、八方美人を抑えていかなければならないと思っているんだけど。 でも別に手を握られたくらいで、他に何をされた訳でもないんだから…

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