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跡取り、見参!(10)

翌日、昼休みに黒原さんから電話が掛かってきた。 ヤバい!社長から何か聞いているに違いない… 無視するわけにもいかず、恐る恐る対応する。 「はい、吹雪です…」 『吹雪君、元気にしてる? 昨日、社長ん家にお呼ばれだったんだって? どう?いろいろ話聞いてもらえた?』 「上京に際して本当にあれこれとお心配りいただき、ありがとうございました。 元気です! お陰様で大分慣れて、バイトも始めました。 あの…そのことなんですが、実は」 『うん。ちらりと聞いてるよ。檸檬君にモーション掛けたんだって? あははっ。それは不味かったねぇ…で? 社長にデッカい釘刺されたんだろ?』 「…ううっ…仰る通りです…そんなつもりなかったのに…俺、社長にも檸檬さんにも顔向けできない……」 『そうかそうか。何事も勉強さ。 ねぇ、今夜空いてる?』 「はい。今日はバイト休みなので…」 『じゃあ奢るからご飯食べに行こう! どういう状況だったのか、それと君の気持ちも聞きたいしね。 今後のこともあるし…まぁ、そう深刻に考えないで。誤解ならちゃんと解いておかないと。 変に拗らせたままだと良くないから。ね? あ、これは社長や檸檬君からの指示ではないから。俺の単独プレイ。 時間は何時以降ならいい? 場所は俺に任せてくれる?』 「すみません。黒原さんにまで心配お掛けして…16時以降なら大丈夫です。」 『OK。 後で時間と場所送るから。 じゃあね!』 「はい、ありがとうございます。 失礼したします。」 はぁ……黒原さんまでお出ましかぁ……やっぱり社長から昨日のこと聞いたんだ。 ううっ、俺のバカ。何であんなことしたんだよ。 後悔先に立たず。 でも、このままではダメなんだ。 自分のやったことの後始末は最後まできっちりと! …今は差し伸べられた慈悲の手に縋るしかない!

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