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跡取り、見参!(12)

ぐだぐだと悩みながら歩いているうちに、指定された場所に到着してしまった。 「うわぁ…凄っ…」 何とも門構えもご立派な日本家屋。 一般の大学生には場違いな… そっと覗き込むと、玄関の両脇には目立たないように、綺麗にうず高く盛られた…盛り塩がある。 足元を照らす小さな行燈がゆらゆらと揺れて、水を打った敷石を照らしている。 すっかり薄暗くなった辺りの風景とマッチして、幻想的な雰囲気を醸し出している。 「ここで…間違いない、よな?」 俺は気後れして、門の中へ入れずに立ち尽くしていた。 「吹雪君!ごめんね、待った?」 急に背後から、黒原さんの柔らかな声音が聞こえた。 「黒原さんっ!」 一気に気が緩んで振り向くと…あれ?黒原さんの隣に… このイケメン外人、誰っ!? あ…『どうしても同席したいって奴』って、彼? 黒原さんと…金山家とどういう関係なんだろう… 「あの…いえ、今着いたところです。 お忙しいのに時間を取らせてしまって申し訳ありませんっ!」 深々と頭を下げると、上から低い声が降ってきた。 「…ちゃんと詫びができるじゃないか。」 「ニールっ! ごめんね、吹雪君。彼は取引先の社長で…あの、えーっと」 「ニルス・アンダーソン・透。ニールと呼んでもいいぞ。 ちなみに、俊樹と将来の約束をしているフィアンセだ。」 「ニールっ、こんな所でっ!!!」 「え?」 「満の伴侶に手を出したという強者は君か? 俊樹にまで手を出されたら、と心配でな、同席させてもらう。」 「え?あの…えーっと…それは誤解で…いや、自分の配慮が足りなくて…その…」 男性??黒原さんの…フィアンセ? “手を出した”と言われたことよりも、黒原さんのフィアンセだという目の前の美丈夫に目を奪われていた。

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