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跡取り、見参!(16)
それまで沈黙していたニールさんが口を開いた。
「おい、吹雪といったか?」
「はっ、はいっ!」
「考えなしに他人 のモンに手を出すからこうなるんだぞ。
ハグが挨拶がわりの外人相手と一緒にするな!
TPOってもんを知らないのか?
これでお前は満から
『俺の檸檬に手を出したヤツ』
ってインプットされたからな。今後、何かあったらその都度ネチネチ言われるぞ、きっと。
これに懲りたら、軽々しく他人の伴侶や恋人…いや、他人に触れるんじゃねえぞ。
満がよく我慢したと思う。
もしここで俊樹の身体に触れようもんなら、お前は隣の部屋まで吹っ飛ぶことになるからな。」
ひぇぇぇっ
「はいっ!申し訳ありませんでしたっ!」
「ニール…何でお前が口を挟むんだ?
吹雪君、ごめんね。
檸檬君はあの通りの純粋でちょっと天然さんなところがあって…絶対に他人を悪く言わない性格なんだよ。
実際『吃驚したけど単なる握手』だと思ってたみたいだし。
満にしたら… 吹雪君が、いくら身内で後継ぎとはいえ、大事な大事な伴侶を勝手に触られたことに対して、君に釘を刺した、って感じだろう。
これは檸檬君だから、ということではなくて、君の将来にも影響があることだから、勉強の一つとして頭に入れておいてほしい。
吹雪君、君は将来、取引先やその関係者、本家絡みの客人なんかを相手にしていかなければならないんだ。
上下関係、立場や風習、お国柄もそれぞれ違うから、相手に失礼のないように振る舞わなければ。
金山家は昔から礼儀作法を重んじているからね。
そしてそれは当主の風格になり、交渉の場にも役に立つんだ。」
「申し訳ありませんでした…俺どうしよう…家から早く出たいがために、何にも考えずに、そんな凄い役目をホイホイと引き受けてしまって…俺なんかで務まるんでしょうか!?」
諭すような黒原さんの声音に涙声で訴えていた。
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