324 / 371

跡取り、見参!(16)

それまで沈黙していたニールさんが口を開いた。 「おい、吹雪といったか?」 「はっ、はいっ!」 「考えなしに他人(ひと)のモンに手を出すからこうなるんだぞ。 ハグが挨拶がわりの外人相手と一緒にするな! TPOってもんを知らないのか? これでお前は満から 『俺の檸檬に手を出したヤツ』 ってインプットされたからな。今後、何かあったらその都度ネチネチ言われるぞ、きっと。 これに懲りたら、軽々しく他人の伴侶や恋人…いや、他人に触れるんじゃねえぞ。 満がよく我慢したと思う。 もしここで俊樹の身体に触れようもんなら、お前は隣の部屋まで吹っ飛ぶことになるからな。」 ひぇぇぇっ 「はいっ!申し訳ありませんでしたっ!」 「ニール…何でお前が口を挟むんだ? 吹雪君、ごめんね。 檸檬君はあの通りの純粋でちょっと天然さんなところがあって…絶対に他人を悪く言わない性格なんだよ。 実際『吃驚したけど単なる握手』だと思ってたみたいだし。 満にしたら… 吹雪君が、いくら身内で後継ぎとはいえ、大事な大事な伴侶を勝手に触られたことに対して、君に釘を刺した、って感じだろう。 これは檸檬君だから、ということではなくて、君の将来にも影響があることだから、勉強の一つとして頭に入れておいてほしい。 吹雪君、君は将来、取引先やその関係者、本家絡みの客人なんかを相手にしていかなければならないんだ。 上下関係、立場や風習、お国柄もそれぞれ違うから、相手に失礼のないように振る舞わなければ。 金山家は昔から礼儀作法を重んじているからね。 そしてそれは当主の風格になり、交渉の場にも役に立つんだ。」 「申し訳ありませんでした…俺どうしよう…家から早く出たいがために、何にも考えずに、そんな凄い役目をホイホイと引き受けてしまって…俺なんかで務まるんでしょうか!?」 諭すような黒原さんの声音に涙声で訴えていた。

ともだちにシェアしよう!