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跡取り、見参!(18)
俺は居住まいを正すと頭を下げた。
「ぜひ仲立ちをお願いいたします!
俺も…社長やニールさんみたいな大きな器の人間になりたい…後ろ指を指されることのない、そんな人生を歩みたい…」
「吹雪君、頭を上げて。
満には話をしよう。でも、断られたらそれでこの話はお終い。
いいね?」
「はいっ!」
「この件はまた満の返事を聞いて連絡するよ。
…あぁ、ごめん、すっかり冷めちゃったね…」
「大丈夫です!いただきます!」
正直言って、その後の鰻の味は美味しかったけど、ちょっと塩っぱく感じた。
ニールさんと黒原さんは、それからもいろんな話をしてくれた。それが嬉しくもあり、気が引き締まる思いもした。
電車で帰ると辞退したのだが、家の近くまで送ってもらう羽目になった。
「吹雪君、結局説教するみたいな形になって申し訳なかったね。」
「いえ、とんでもないです!
俺、反省することばかりで……オマケにご馳走になっちゃって。」
「君さえ良ければ、また一緒にご飯食べようよ。」
「2人っきりは許可しないぞ。」
「ニール!本当にもう…何だか、ごめんね。」
「ははっ!ありがとうございます!ぜひまた、ニールさんもご一緒に。
黒原さん、愛されてるんですね…いいなぁ。」
「俊樹には手を出させないからな。」
「ニールっ!
じゃあ、吹雪君、また連絡するから。」
「はい、本当にありがとうございました。よろしくお願いいたします。
ご馳走様でした。」
ニールさんみたいな安定感のある高級車が見えなくなるまで見送った。
「ふぅ……」
まだ解決はしていないけれど、俺はやる気に満ちていた。
俺もいつか、檸檬さんや黒原さんみたいなパートナーを…
ん?んん?
ちょっ、待って。待って。
俺、男もイケる口?
うーーーん……複雑な思いを抱えながら、エレベーターのボタンを押したのだった。
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