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取越し苦労(8)

一つ下の階でエレベーターの中で、さっき買ったアイスを1つ、黒原さんに押し付けて別れ、お義母さんを招き入れる。 いつも出掛ける前は粗方片付けて出てくるから、そんなに散らかってはないと思うんだけど… 「お義母さん、どうぞ。散らかってるけどゴメンナサイ。」 「いいのよ、そんなの! 私こそ急に押し掛けちゃってごめんなさいね。 あら、綺麗にしてるじゃない! 十分過ぎるわよ、檸檬君。」 「ううっ、ハズカシイデス…俺、お風呂の準備してきます!」 お義母さんのお相手を満さんに頼んで、俺は浴槽にお湯を張りに行った。 バスタオルとフェイスタオルと…すぐに入れるように整えてから、客間のベッドメイクに取り掛かった。 室温は大丈夫かな。 フットライトの点灯もチェックした。 少しでも、クタクタのお義母さんが休めるように… そうだ。多分今日だけの泊まりじゃないはず。 お義父さんが退院するまではここに泊まってもらえばいい。 病院にも近いし、何かあればすぐに俺達で対処できる。 後でそう言ってみよう。 リビングに戻ると、満さんとお義母さんが何か話をしていた。 俺に気付くと 「あ、檸檬君、ご迷惑かけちゃってごめんなさいね。今日はお世話になるけど、明日からは大丈夫だから!」 「あの、差し出がましいんですが…満さんにもお願いしたいんだけど。 お義母さんさえ宜しかったら、お義父さんが退院されるまで、ここで泊まってほしいんです。 病院にも近いし、何かあれば満さんか俺、それに黒原さんもいますから、お役に立てると思うんです! ぜひ、ぜひそうして下さいっ!」 「え?檸檬君…でも」 「ね、満さん、いいでしょ? お義母さん、お願いします!」 「甘えちゃっていいのかしら。 檸檬君、私がいたらあなた大変じゃない?」 お義母さんは遠慮しつつも嬉しそうだ。

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