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取越し苦労(15)

2人がいるリビングに戻るのは、泣いた後で何となく気不味いけれど…… ドアから隠れるように顔を出した瞬間 「檸檬!アイスが待ってるぞ!」 と満さんが飛んできて抱きしめられた。 「ちょっ、まっ、お義母さんが」 腕を突っ張りながら小声で言うと 「分かってる。少しだけ。」 と、耳元で同じように囁かれ、逆らえなくなって動きを止めてしまう。 お義母さんは俺達に背中を向ける形で座っているから、俺達のことは見えない。 俺を抱きしめたまま、満さんが叫んだ。 「お袋ぉ〜、バニラとチョコとラムレーズンとどれにする?」 「バニラ!」 「OK!檸檬はチョコだな?」 満さんは俺にキスをひとつ落とし、手を繋ぐとキッチンへ連れて行った。 「檸檬、スプーン持って行って。」 言われた通りに俺はスプーンを。 満さんはアイスを持ってソファーに座った。 「お待たせしちゃってごめんなさい。」 「いいのよぉ。ゆっくりできた?」 「はい!ピッカピカに磨いてきました!」 ブフォッ 「いやだぁ、満!何吹いてんの! ティッシュ、ティッシュ!」 口に含んだアイスを吹き出した満さんのテーブルの前やカーペットを慌てて拭き取ったり、ダスターを持ってきて拭き直したり…と大騒ぎになった。 「…すまない…ちょっと、画像が…(モニョモニョ)」 「画像?」 「何でもない。ひとり言だ、気にしないで。」 「本当に、もう、何を想像したやら…満、しっかりしなさいよっ!」 お義母さんのその言葉でやっと理解した。 身体を『ピッカピカ』に『磨く』に、満さんが反応してしまったのだ。 いやいや、夜に備えて、じゃないですよ!? 別にそういう意味で言ったんじゃないんですからねっ!? お義母さんがいるんだから、ソンナコトしませんからね、絶対に!!!!!

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