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取越し苦労(19)

ふ…と目が覚めた。 時計は…いつもの時間の5分前。 そっと手を伸ばして、鳴らないようにアラームを止めた。 満さんは俺の胸の中で小さな寝息を立てている。 良かった…眠れたんだ。 少しだけ震える満さんの頭と背中を撫でながら、2人ともあのまま抱きしめ合って眠りについた。 もう大丈夫だろう。 何たって俺は『金の檸檬』なんだから! その俺が一晩中抱きしめてたんだ。パワー満タンに決まってる! 満さんを起こさないようにそっと身体をずらして離れ、ベッドから降りた。 身体のあちこちが痛い。 多分、寝返りも打たずに眠ったせいだろう。 それでもその痛みは心地良かった。 …キッチンから音が聞こえる! 「お義母さんっ!?」 「あら、檸檬君早いのね。おはよう! 勝手に使わせてもらってるわよ。」 「おはようございます。 って、昨日の今日なんですから、もっとゆっくりして下さい!」 「ふふっ。ありがとう。 でもね、お陰でゆっくりぐっすり眠れたのよ。 だから早く目が覚めちゃって。 檸檬君の手間を少しでもなくしたいと思って、つい…」 「お気遣いいただいてすみません…お休みになれたのならいいんです! じゃあ、俺顔洗ってきますから一緒に手伝ってもいいですか? 満さん、久し振りにお義母さんの手料理食べたいだろうし、俺も楽しみです!」 「ふふっ、そう?待ってるわ。」 俺は急いで洗面を済ませるとキッチンに戻った。 スウェットのままで着替えてないけど、寝室に戻ってクローゼットをガタガタやって、ぐっすり眠る満さんを起こすよりはマシだ。 「お義母さん、こんな格好でゴメンナサイ。」 「いいのよ。満のこと起こさないように…でしょ?檸檬君、あなた優しい子ね。」 何も言わなくても分かるお義母さんは、やっぱり凄い。 もう殆ど下拵えも終わっていたし、料理はお義母さんにお任せして、俺は専らテーブルのセットに専念した。 時々覗いてはお義母さんに教えてもらったり、冗談を言い合って笑っていた。

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