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取越し苦労(21)
ぷくっ
ぼふっ
子供みたいに頬を膨らませた満さんは、布団に潜ってしまった。
「えっ!?あの、満さんっ!?」
こんもりと膨らんだ布団の塊を唖然として眺めているうちに、何だかおかしくなってきた。
くっ…ふっ…ぷっ…あはっ、ははっ…あははっ
俺が笑い転げていると、満さんがちろりと布団から顔を出した。
「…何で笑ってるの…」
「くっくっ…だって、だって満さん…頬っぺた膨らませて…子供みたいっ」
「誰のせいなんだよ…」
「ぶふっ…俺…ですよね?」
「…………」
俺の態度にヘソを曲げたのか、また布団に潜り込んだ。
あ…ヤバい。笑い過ぎたか…
「満さぁーん…笑っちゃってゴメンナサイ…
満さん、起きて!ご飯食べましょ、ね?」
宥めるように、ぽむぽむと布団を叩くと、それに反抗するように、ぎゅむっ、と布団の端が内側に引っ張られた。
もう…本当に子供みたいだ。
こうなったら…仕方がない。
真ん中あたりの、少し隙間の空いた所から俺も潜り込んだ。
「えっ!?うわっ!れっ、檸檬っ!?」
満さんの焦った声が聞こえた。
それにお構いなしに伸び上がって、ぎゅうぅぅぅっ、と満さんを抱きしめると、狙いを定めて思いっ切り唇を押し当てた。
ぶっちゅーーーっ
どうだ!
これで文句はないだろっ!?
熱烈なモーニングキスだっ!
最後に“ちゅうっ”と盛大なリップ音を鳴らして少し離れた俺は、優しく声を掛けた。
「満さん、起きましょうね。」
布団を跳ね上げにっこり微笑むと、満さんは無言でこくこくと頷いていた。
ふふん、俺の勝ち!
2人してキッチンに行くと、お義母さんはもうご飯も味噌汁もよそって待っていてくれた。
…意外と俺は平気だったけど…
満さんは魂が抜けたような顔をして、俺と視線が合う度に頬を染めては反対方向を向くせいで、お義母さんには…バレていたと確信した。
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