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取越し苦労(22)
お義父さんが大変な時に、俺達は何やってるんだ!?
あんなことしてる場合じゃなかった…しっかりしなきゃ!
俺は『今は緊急事態です!しっかりして、シャキッとしましょう!』という思いを込めて、満さんをじっと見つめた。
すると満さんは、何をどう勘違いしたのか、ふっ、と口元を綻ばせ、さり気なく俺に近付くと耳に口を寄せて囁いた。
「檸檬…夜まで…我慢だよ…」
「はあっ!?」
「だから…夜まで」
「ちっがぁーーーうっ!!!
違うっ!!!そんなんじゃないっ!
そんなこと言ってるんじゃないっ!!!
“しっかりしてシャキッとしましょう”って言いたかっただけなのにっ!
満さんの…満さんの馬鹿ぁーーーっっっ!!」
「れっ、檸檬?何っっ?どうした?」
「檸檬君!?どうしたの?」
俺が突然叫びまくったせいで、満さんだけじゃなく、お義母さんまでオロオロとしちゃってる。
うっわぁー…巻き込んだ…マズい…
少し冷静になった俺は頭を下げて
「ゴメンナサイっ!!!」
とひと言だけ叫んで、寝室に逃げ込んだ。
ベッドにダイブして突っ伏すと、賢者タイム突入……
うわぁーん!
檸檬の馬鹿!
何やってんだよっ!
ううっ、勘違いする満さんも悪いんだ!
なーにが『夜まで我慢』なんだよっ!
ナニを我慢しようって言うんだ!
あー、腹立つ。
調子に乗って“ちゅー”した俺も悪い。
でも、お義母さんがいるのに、あんな分っかりやすい態度取らなくてもいいじゃん。
はぁ…今頃追求されてるんだろうな。
あぁ、気不味い…
食器の後片付けも放りっ放しだった。
お義母さん、吃驚させちゃった…
そぉーっとドアの隙間から覗いてみると…
カーペットに正座して項垂れる満さんをお義母さんが、どうやら説教しているような…
うひゃあー…ヤッバァーい!
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