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取越し苦労(23)
所々漏れ聞こえてくるのはお義母さんの声。
「…だからね、…………なのっ!
全くあなたというひとはっ!
…………、謝って…………っ!!!」
内容はハッキリとは聞き取れないが、あぁ…満さんが叱られている…
俺のせいだ!胸がきゅっと痛んだ。
俺は飛んで行って、満さんの横に正座すると頭を下げた。
「ゴメンナサイ!俺が悪いんです!
満さんもちょっとは悪い、と思う、けど…お義母さん、もう許してあげて下さいっ!」
「檸檬君…」
「檸檬…」
沈黙……
ぎゅっと瞑っていた目を開け、そっと顔を上げた。
お義母さんは両手で口元を押さえて吹き出すのを我慢してる…感じ。
両肩がぷるぷると震えている。
満さんは…顔を覆って突っ伏している。
こちらも…両肩が震えている。
?????
「あの?…えーーっと…………んぐっ」
満さんに思いっ切り抱きしめられていた。
「檸檬…ゴメン…ありがとう…」
「えっ、えっ!?」
「檸檬君…本当に、あなたってコは…」
満さんの腕の隙間から伺い見ると、お義母さんは満面の笑みで俺を見ていた。
「…あのぉ…えーっと…俺、何かやらかしちゃいましたか?」
「そうね!
私達の胸をキュンキュンにしちゃったわね!
ふふっ、朝から『ご馳走様』でした!」
ああっ!!!
やっぱり…バレていたのか…
はあぁ…大きなため息をつくと、居た堪れなくて両手で顔を隠した。
消えたい。
時間よ、戻れ!
恥ずかし過ぎる。
誤解した満さんも悪いんだ!
何であんなこと言ってしまったんだろう。
ふわふわと、細い手が俺の頭を優しく撫でてきた。
この手は…お義母さんだ!
「檸檬君…夕べも言ったけど…
満を…心から愛して大切に思ってくれて、本当にありがとう。
檸檬君、私、あなたのこと、大好きよ。」
満さんと良く似た優しい瞳が笑っている。
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