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取越し苦労(24)

「お義母さん…俺も、俺もお義母さんのこと、大好きですっ!」 「ちょっと待ったぁーーーっ! 俺を無視して2人で何告白大会やってんだよっ! お袋、檸檬は俺の!絶対渡さないからっ! 檸檬も檸檬だ!俺以外に『大好きだ』って言うんじゃないっ!」 満さんは俺をぎゅうぎゅうに抱きしめ、お義母さんから隠そうとする。 「満!檸檬君をこっちに渡しなさいっ! うちのかわいい息子を独り占めするんじゃないわよっ!」 「五月蝿いっ!檸檬は俺のもんだ! ところでお袋…早く支度しないと病院に行くのが遅くなるぞ…」 「あらっ、ホントだわ。 ううっ、残念だけど檸檬君をハグするのはお預けね。 満、今は引き下がるけど、檸檬君はあんただけがかわいがっていいんじゃないんだから! ねっ、檸檬君♡」 お義母さんは俺にウインクすると、パタパタとキッキンに戻っていった。 水を流す音が聞こえ、お義母さんが片付けてくれているのが分かった。 「あっ、俺後片付けしなきゃっ!」 満さんの腕から抜け出そうとしても、絡み付いた手が蔦のようにますます絡んでくる。 「満さんっ、離して!」 「…やだ。」 「もう、子供じゃないんですからっ! お義母さんがいる側で、こんなことしないでっ!」 満さんは、いやいやと首を振って、俺を離してくれない。 「はあっ…何も拗ねてるんですか? もう…いい大人なんだから」 「大人は甘えちゃダメなのか?」 「え?」 「…俺は檸檬に甘えたらダメなのか?」 「ダメじゃないけど…時と場合によるでしょ? 今はお義母さんが近くにいて2人っきりじゃない。 お義父さんも入院中。 朝ごはん食べたばっかり。 夕べも散々甘えましたよね?」 「…足りない。足りないんだ。 オマケに檸檬は俺以外に『大好き』って言ったし。」 「…満さんのことは愛してますよ。 分かってるでしょ?」 また、いやいやと首を横に振る。

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