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取越し苦労(27)
ベッドの側の空いたスツールに腰掛けた。
ピッ ピッ ピッ
規則的に鳴る電子音と、モニターに映される血圧や呼吸数…
それはどれも正常なようで、エラー音が鳴ることはなかった。
「ごめんなぁ、心配掛けちゃって。
でも処置が早くて思った以上に回復もいい感じなんだよ。
明日にはここから少し離れた静かな部屋に移れそうなんだ。」
「本当にこれで済んで良かったよ…親父の運のいいのが証明されたな。
確かに、幾ら個室とはいえドアも開けっ放しだし、そこの窓から看護師さん達が見えるもんな。
まぁ、ICU出たばかりの患者で、しっかりと経過観察が必要だから仕方がないんだけど…落ち着かないよな。
お袋はずっと面会時間一杯ここにいるのか?」
「そうね。その方が私も落ち着くし…」
「満さん、座ってても楽な椅子、持ち込んだらダメでしょうか?
俺、聞いてきてもいいですか?」
「あら、檸檬君、そんなこと…」
「俺も一緒に聞いてくるよ。檸檬、行くか?」
「はい!」
ずっと座りっ放しなんだ。
少しでも楽な方がいい。今度お義母さんまで倒れちゃったら大変だ!
俺は2人に「行ってきます」と声を掛けて、隣のナースステーションに出向いた。
結果…
お願いしたけどやんわり却下された。
その代わり、明日から入る予定の部屋には、ここよりもグレードの高い、長時間座っても大丈夫な付き添い用の椅子が備え付けられてるらしい。
「…ダメなんですね…クッションならいいと言ってたから買いに行きましょう!
お義母さんに伝えてきます!」
俺は部屋に戻って手短に伝え、他の買い物も頼まれて満さんと出掛けた。
「お義母さん、今は気を張ってるから元気だけど、丸一日の付き添いって大変じゃないんでしょうか…
じっとしてるのも身体がカチカチになっちゃう…」
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