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取越し苦労(28)
満さんは俺の頭をぽんぽんと叩くと
「あの人達はいつも一緒で、それが当たり前になってるからどんな環境でも側にいたいんだ。
離れ離れになる方がストレスになる。
大丈夫だよ。
お袋はああ見えても、その場その場で楽しみを見つけるのが得意なひとだから、きっと病院でも色々とエンジョイするだろう。
檸檬もそんな気を遣わないで。檸檬の方が倒れそうな顔して……
もう大丈夫だから。ね?」
「…はい。俺、そんな酷い顔してますか?」
「気の張り過ぎ、遣い過ぎ。
いつもの檸檬でいいから。
買い物頼まれたんだろ?何処から行けばいい?
遅くなっても構いやしないよ。2人でいたいんだから、邪魔しちゃ悪いだろ?」
満さんは、あははっ、と笑って、俺の頭をもう一度撫でた。
…またやっちゃった。
気配りのアンテナ、少し片付けておこう。
満さんと一緒なら、素の俺でいられる…
「じゃあえっと…先にクッションを見つけたいです!」
「OK!ここからだと…近場でいいな?」
「はい、お任せします。」
車中でたわいもない話をしながら、家具量販店に向かい、1軒目で希望通りの物をゲットできた。
ついでにそこでお義母さんから頼まれた雑貨も買った。
俺は何件か回りたかったのだけど、満さんがもう既に買い物の付き合いに飽きてきた風だったので諦めて、そこで済ませることにしたのだ。
「夕食の買い物は、病院の帰りにしますね。
いつものスーパーに寄って下さい。」
「そうか、分かった。
檸檬、あとは俺に付き合ってくれ。」
「満さんも何か欲しいものが?」
「いや、檸檬とデートがしたいだけ。」
「えっ、デート!?」
満さんは、ふふん、と笑うと定番のコーヒーチェーン店に車を停めた。
「さ、行くぞ。」
慌てて後を追い掛けると、満さんは俺に合わせてゆっくりと歩き出した。
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