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取越し苦労(33)

上品に爆食いをするお義母さんを見ながら 『女は強し』を実感した俺達なのだった。 因みに俺達のメニューは… 満さんが“若殿ランチ”…お義母さんのより随分量が少ない…天麩羅の盛り合わせじゃなくて海老天が2尾、お蕎麦は並、茶碗蒸しは無くておにぎりが1個。 俺は“ハーフセット”…麺もご飯も半分。  それでもやっとやっと平らげた。 …さっきのコーヒーが効いていた。 お義母さんは、食後に運ばれてきた豆乳プリンを頬張りながら 「あなた達…意外と食が細いのねぇ…」 と心配そうに呟いた。 いやいや! 心配なのはお義母さんの胃袋なんですけど! 晩ご飯のトンカツ、入りますか!? …とは流石に言い出せず 「実はさっき、コーヒー飲んじゃったんですよぉ…えへへっ…胃がチャポチャポしてます…」 「あら。デートだったのね。 この後も病院まで送ってくれれば、後は来なくてもいいわよ! ご飯ができる頃にタクシー拾ってマンションに行くから、お家で待ってて頂戴。 今夜から泊まるホテルも決めてるから、もうお邪魔はしないわよ〜♪」 「おっ、お義母さんっ!?」 昨夜(ゆうべ)のことを思い出して、ぼふっ、と顔から火が出そうになった。 チッ、と舌打ちした満さんがお義母さんを嗜めるように言った。 「お袋…ちょっと黙ってろ…」 「あはっ、ごめんごめん! お詫びに、ここは私が払うからっ!ねっ!?」 あああっっっ…蘇る昨夜の…… それに気付いた満さんが慌ててお義母さんに伝票を渡すと 「はいっ!ご馳走様でした! お袋、お会計よろしく! さ、檸檬、俺達は先に車に乗ってようぜ。」 と、さっさと俺を連れ出した。 「えっ!?あっ!お義母さん、ご馳走様です!」 「任せてぇー!」 ひらひらと手を振ってるお義母さんを残して、俺達は店の外に出た。

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