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取越し苦労(36)

ご飯の用意をしなくちゃ お義母さんが来てしまう 帰ってきたばかりでシャワーも浴びてない 満さんの愛を拒む理由は、幾つも頭に浮かんでは消えた。 「はっ…みつる、さんっ…」 その時にはもう床に押し倒されていた。 そしてシャツをたくし上げられ、胸の粒に吸いつかれ、ズボンの前を寛げられて満さんの大きな手で揉み込まれていた。 じゅわりと溢れ出した先走りが、ボクサーパンツの前の色を変えている。 何だか少し、射精()してしまったような気がする… ハッと我に返り、思わず涙目で満さんを見つめ、その手を止めた。 「檸檬?」 何故止める? どうして? 愛し合いたい 満さんの瞳が、そう伝えてくる。 俺はゆっくりと首を横に振ると 「お義母さんが… それに、晩ご飯の支度にかからないと…」 俺は喉元まで捲れ上がったシャツを元に戻し、上体を起こした。 少し掠れた声の満さんにまた名前を呼ばれた。 「檸檬、今夜…いいか?」 俺は…少し迷ったけど、頷いた。 残念なような、ホッとしたような顔の満さんは 「悪いけど先にシャワーを浴びてくるよ。 出たら手伝うから。」 と、俺の鼻先にひとつキスを残して部屋を出て行った。 立ち上がりベルトを直そうとして気付く。 中が、ちょっと…ぬめっとする… どうせ洗濯するし、とにかく支度を済ませてから俺もシャワーを浴びることにしよう。 料理が先だ! 微かに淫猥な雄の匂いを感じるけれど、料理の匂いに紛れて分からなくなるだろう。 そう覚悟を決めた俺は、念入りに手を洗い直して、料理に取り掛かった。 俺がシャワーを浴びて、皿の盛り付けを始めた頃にお義母さんが到着した。 「あーっ、美味しそうな匂いがするぅ〜! 檸檬君、これお土産よ。」 ドサドサっとリビングのテーブルに並べられたのは、デパ地下の袋。

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