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取越し苦労(38)
お義母さんに目一杯褒めてもらい、満さんにはお義母さんがいるというのに臆面もなく惚気られ、俺は赤くなるやら青くなるやらで、飲み込んだトンカツが何処かにいってしまった。
食べ終わって、お義母さんと仲良く流しの片付けをした後は、お待ちかねのケーキタイム。
リクエストの紅茶は、満さんが入れてくれた。
「さぁ、檸檬君、どれでも好きなのを選んでね。
悪いけど全部私が食べたい物だから、私は1番最後でいいから。」
「えっ!?でも、お義母さんが先に」
「檸檬、遠慮するな。俺は…チョコレートにしよぉーっと。」
「満!あなたは檸檬君の後よ!」
「お義母さん、いいんです!
俺は…苺を…お先にいいですか?」
「もう、満ったら…ごめんね、檸檬君。
いいわよ!」
「はい!遠慮なく先に選ばせてもらいました。
俺もお義母さんのチョイス好きです。」
そうか。
満さんはチョコレートが好きなんだ。
通りで…バレンタインのチョコをめっちゃ喜んでいたはずだ。
満さんは俺に“ごめんね”とウインクをして、ティーカップを置いた。
ボリュームがあるけど甘さが控えめで、とっても美味しかった。
満腹でもやっぱりデザートは別腹。
さっきのトンカツは何処へ行ったやら、あっという間に完食した。
「もう落ち着いたから、あなた達はもう病院に来なくても大丈夫よ。
『しっかり仕事をするように』って伝言を言付かってるの。
何か変わったことがあれば連絡するから。
私のことも心配いらないわ。明日は聡子さんが来てくれるそうだし。」
「そうか?
でも暫く入院だろ?仕事に差し障りのない程度に顔を見に行くよ。」
「お義母さん、いつでもいらして下さい。
俺、ご飯作って待ってますから!」
お義母さんは俺の頭をポンポンすると
「また甘えに来るわ。
檸檬君のご飯は元気が出るし美味しいもの!
…気を遣い過ぎちゃダメよ。でも、その気持ちとっても嬉しいわ。ありがとう。」
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