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取越し苦労(39)

お義母さんがタクシーに乗り込むのを見送って、部屋に戻ってきた。 俺がカップとかを片付けようとするのを制した満さんは 「檸檬はここで座ってて。」 と言い、無理矢理ソファーに座らせられた。 一度言い出したら折れないのが分かってきたから、ここはありがたく言われる通りに座って待っていることにする。 カチャカチャとキッチンから音が聞こえ、何となく手持ち無沙汰でクッションを抱えてぼんやりしていた。 間もなく片付けを終えた満さんが俺の隣にぴったりとくっ付いて座る。 抱えていたクッションはやんわりと外され、ぎゅっと抱きしめられる。 「…檸檬、『ありがとう』と『ごめんね』を沢山言わせてくれ。」 「『ごめんね』は、いりません。 その代わりに……『愛してる』を……」 「檸檬…『ありがとう』『愛してる』……」 「ふふっ…擽ったいです…」 満さんは俺をすっぽりと抱きしめて、耳元で ありがとう 愛してる を繰り返し繰り返し囁いている。 甘く低い声音と肌の温もりが心地良くて、俺は満さんの腕の中でうっとりと目を閉じていた。 言葉と言葉の間に、沢山のキスが顔中に降ってくる。 「…満さん…」 「何だ?」 「俺、今日お義母さんと満さんに沢山褒めてもらって、凄く照れ臭かったけど、それ以上に嬉しかったんです。」 「そうか。でもそれは全部本当のことだからな。」 「ふふッ…ありがとうございます…」 「…なぁ、檸檬…」 「はい?」 「激しくしないから、その…抱いていいか?」 「えっ!?」 「(コホン)だから…お前を抱いて眠りたい。 …ダメか?」 …満さんの“満さん”も主張している。 何処でスイッチが入ったのか…また俺が煽ったのか!? 何も煽るようなことはしていない…はず…

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