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取越し苦労(40)
実は俺も…満さんの熱が恋しくなってしまっていた。
色んな管に繋がれて、電子音の鳴る部屋に横になっていたお義父さんを見て、俺は何故か
『悔いのない毎日を』
と思っていたんだ。
ひとの命なんて、1分先にはどうなるか分からない。
その時々の自分に正直に生きていこう。
大好きな人には大好きだと伝えなきゃ。
俺は満さんの腕に、両手をそっと絡めると囁いた。
「穏やかな愛の交わし方も…良いかもしれませんね…」
ひゅっ、と喉が鳴る音が聞こえた。
見上げると、満さんは耳まで真っ赤になっていた。
「檸檬…お望み通りに…善処するっ!」
唇と唇が優しく触れる。
啄み合うキスは、やがて触れる時間が長くなり…
気が付くと、俺はベッドに横たわり、何も身に着けていなかった。
いつの間に?
もう、考える余裕もなく、満さんに包まれていく。
優しく、ひたすらに優しく触れる指先。
擽ったい場所もあるけれど、もっともっと触ってほしい。
俺も。俺も満さんに触りたい。
手を伸ばし、満さんの肩を広い背中を撫でていく。
「あぁ、檸檬…凄く気持ちイイな…お前が触れるところが喜んでる。」
「俺も…満さんが触れるところ全てが気持ちイイです…温かくて優しくて…何だか泣きそうになってます…」
じわじわと神経まで侵されていくように、満さんの愛が沁みて、胸がきゅんきゅんしている。
間近にある満さんの顔が少しボヤけて見えるのは、涙の膜が張っているせいなのか。
何でこんなことで泣いてしまうのか。
涙腺が緩んで困る。
「泣きたいほど俺を感じてくれてるんだろ?
嬉しいな、嬉しいよ。
檸檬、俺はこの温もりを守っていく。
親父以上に身体にも気を付けるようにする。
だから、ずっとずっとこうして愛し合おうな。」
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