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「榊原!」
「田渕?!」
「きゃ!」
急に勢い良く扉が開き、そこには仁王立ちした田渕が立っていた。
何を考えてるんだアイツは!今までは行為が終わるまで教室に入って来なかったのに。
俺は慌てて側に脱ぎ捨てていたブレザーを女に掛ける。
「俺を放っておきながら、随分楽しそうだな?」
「…田渕?」
田渕のやつ、怒ってる?
俺が避けていた事もあるが、今までの田渕からは想像も付かない様な様子の田渕に、俺は思わず戸惑う。
そんな俺を他所に、田渕はズカズカと俺達に近付いて来た。
「お、おい、田渕」
「邪魔して悪かったな。なぁ、そこの女」
「へ?」
「俺も、混ぜてくれないか?」
な、何を言ってんだコイツは?!
あろう事か田渕はそんな事を言うと眼鏡を外し、女に顔を近付け、何とも厭らしい顔で笑った。
見た事ない田渕の表情に思わず息を飲みつつ、ハッと我に帰る。
俺は赤面する女から田渕を引き剥がした。こんな攻め顏の田渕、初めて見たぞ。
「何馬鹿な事言ってんだ、行くぞ!」
「わっ!」
俺はそのまま田渕の腕を引き、とりあえず教室を出た。
「田渕お前、何考えてんだよ」
いつもの空き教室に入り、田渕に問い詰める。だが田渕は何故か俯いたまま、答える事は無い。
多分、俺が露骨に避けて居たから怒ってるんだろうけど。ゲイである田渕が自ら女を抱こうとするまでとは思わなかった。
「それは、俺のセリフだ榊原」
「は…っ?!」
口を開いたと思ったら、急に田渕が俺の胸倉を掴み引っ張って来た。俺は前屈みになり、目の前に田渕の顔が追う。
「榊原、今更俺から逃げようと思っているのか?」
「は、いや、逃げてる訳じゃ…っん!」
田渕の眼鏡越しの鋭い射抜くような目に思わずたじろぐ俺に、田渕は勢い良く唇を重ねて来た。
離れようにも思い切り胸倉を引っ張られていて、屈んだ状態のまま身動きが取れない。
こいつ、こんなに力強かったのかよ。
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