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第7話

「兄さん、久しぶりに帰って来るのに、優斗にだけ会おうなんて冷たいじゃないか。  家には帰らないの?」 「日程短いから東京までしか来る予定なかったんだ。悪かったな、知らせもしないで。でもよく来てくれたね」 2人の弟の後ろにもう1人、愛らしい顔をした少年がいるのに気が付いた。 「ミチル兄さん、こちらルイ君といってね、アルバイトに来てくれてる大学生」 「藤原ルイといいます。優斗さんにはいつもお世話になっています」 それから僕らはカウンターに陣取って、5年分のあれやこれやを話した。主に僕のバリの話だ。 ふと暁星が聞いてきた。 「ところで兄さん、昨日はどこに泊まったの?」 「ああ、昨日か」 夢のような時間を思い出し、甘い気持ちで胸がいっぱいになる。 「大学の時の友達に偶然会ってね。つい話が弾んでさ」 「その友達って、誰?」 「え? 誰ってお前……」 3人の視線が僕に集中する。自分の顔が赤くなってるのを感じる。暁星のヤツ、僕を茶化そうとしてるのか?  3人の顔を見比べて最後に暁星を見れば、どうもそういうわけではないらしい。イヤにまじめな顔をしている。 「アレだよ、その、沖田って言ってさ。  昔お前らも会った事あるだろ?  あいつ、まだ学園都市に住んでるんだよ。びっくりした」 暁星と優斗が驚いた顔をして目を見合わせる。 「沖田さんって、あの? 誠司さん?」 照れているのを隠すように軽くうなずくと、暁星が僕をのぞきこむようにしてゆっくり口を開いた。

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