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第15話 ギリギリを超えたら

「俺の名前、健人って呼んでみて? 健人、お願いイかせてって」 「あ、あぁぁっン!」  乳首と同時に耳も攻められて、一気に身体が熱くなっているのが、濡れた瞳が滲ませる目尻の涙でわかる。  まだ触れていない、熱の固まりを触って欲しそうに腰を浮かして、でも俺は意地悪くそれを避けるように、身体をズラした。Tシャツ越しっていう、どこかもどかしい刺激と、触られてもいない中心、アルコールで犯されていないはずの郁登の脳みそが、快感で溶けそうになる。  唇はその言葉を言えば、この熱から開放されるんだろうかって、震えながら迷っている。 「郁登……ほら」 「んっやァ……」 「早く」  耳だけじゃまだ持ちこたえる理性を、早く剥ぎ取ろうと、首筋にキスマークを残すような、チリチリとした痛みを伴う愛撫をしたら、吐息の温度が一気に上がった気がした。 「あ、健人……あ、イきた、いっ」 「どこを弄られて?」 「や、ァ……バカ、言える、わけないだろっ」 「言って、ほら、俺も限界だから」  腰を太腿に押し当てると、明らかにそこには興奮を示す固まりがあって、それを感じた郁登が切なそうな眼差しでこっちを見上げていた。その唇に噛み付くみたいにキスをして、舌に触れたら、さっきよりも熱くて、柔らかい舌にこっちが先に陥落しそうになる。 「ん、んふっ……んンっ」  くちゅって響く濡れた音と、郁登の息と一緒に吐き出される甘い喘ぎ声。それを聞きながら乳首に触れるか触れないか、布越しに擦ったら、痛そうな顔をしていた。 「や、も、バカ! もっと」 「もっと?」  言わなければ与えられる刺激はここまでとでも言うように、指は頑なにそれ以上乳首に触れずにいた。ほら、早く、言ってしまえ、あんたからちゃんと落ちてくれなくちゃ、こっちはもうどっぷり嵌ってるんだ。ズルいだろ。 「あっ健人っそこ、もっと触って! それじゃヤダ」 「何が?」 「あ、あんた、イジメてんのか?」 「まさか、イジメは反対だよ、林原先生」  わざとここで教師って立場を思い出させて、教育者にはあまり似つかわしくない台詞を言わせようと、ずっと熱を篭もらせているジャージのズボンに手を伸ばした。 「っ」  それだけで期待に息を詰まらせる郁登が可愛い。何がどうそう見せるんだろう。男なのに、それなのに、今、俺の下で興奮して欲情しながら、ギリギリのところでまだ戸惑う姿が愛しいって思った。そしてこのギリギリの場所を越えた瞬間に、乱れて快感を味わおうとする姿、あの晩の郁登を思い出して、心臓が止まりそうなほど興奮する。  ジャージだけを下ろされて、下着はまだ履いたまま、指をほんの少しだけ潜り込ませた肌はやたらと熱かった。 「すごい……下着に沁みが出来てる……触って欲しい?」 「あ……健人……」  息の熱さを感じられるくらい近くで、唇が触れるか触れないかのところで、そう訊いた時だった。 「触って、全部、も、イかせて」  切ない声が告白した瞬間、言葉が舌と一緒に俺の中に入ってきた。  角度を変えて、もっともっと深く繋がろうとする舌同士を絡ませて、飲みきれない唾液が、キスのほんの少しの隙間から溢れる。  指先がからかうように下着の下をくすぐっていた。その手をスルッと中へ忍ばせたら、ゾクゾクするくらいに中を濡らしている。先走りで出来た沁み、その中心に指をもっていって、先端をクルリとなぞると腰を浮かせて感じている。乳首をやらしく尖らせて、しなった身体はまるでもっと摘めってせがんでいるみたいに、そのやらしい乳首を晒していた。 「お願っ」  自分からTシャツの裾をまくって、布越しじゃない刺激を欲しいってねだってくれる。 「やらしい格好してる……林原先生」 「あ、だって、あんたの触り方が、や、らしい、から、だっ!」  ビクビクと腰を跳ねさせながら、感じまくっている姿に、こっちも暴れ出しそうなくらいに興奮した。  清潔感溢れる白いジャージは邪魔物みたいに、ベッドの下でクシャクシャになっている。そして同じように爽やかな白いTシャツは捲られて、綺麗にバランスよく筋肉のついた裸が良がって、踊っていた。やらしくくねる姿がベッド脇にある照明の薄明るい下で、やたらと艶っぽく見えて、自然と喉が鳴る。 「あ、健人ぉ……」 「乳首も、でしょ?」  頷くよりも、そのピンク色で、女のよりもやらしい尖りを差し出す姿の煽られた。 「あァァァっ! あ、ン!」 「乳首、好き?」  フルフルと首を振っているけれど、確実に乳首が弱い。その証拠に、その尖りの片方を口に含んで、舌先で転がしたら、上下に扱いていた屹立からはもっと大きく濡れた音が響いている。先走りが溢れて、先端からトロトロと、扱いている竿を濡らして、俺の掌が与える快楽をより一層自分の好みに変えていった。 「すごい濡れてる」 「あ、健人、も、ダメ、俺、イっ」 「郁登」  思わず自分の声が掠れてしまった。イきたそうに切ない声が俺の名前を呼ぶ。初めての時よりも、その距離感が縮まっているせいか、声だけでも相当興奮してしまう。実際、まだズボンの中の自身が笑えるくらいに張り詰めていた。 「お願、イかせて……」  触られた瞬間にイってしまいそうなほど興奮している。乳首を舌で愛撫されながら、俺の濡れた掌に擦り付けるみたいに自分から突き入れている。 「健人」  名前を呼ばれて顔を上げたら、両頬を包まれて、やらしい声を上げる唇に捕まえられた。舌を差し込まれて、くちゅくちゅと掌と郁登の屹立が擦れる音と似た音をさせながら、舌同士がまた絡まり合う。 「んふっ……健、人のキス、ホントやば……」  初めての晩も俺の唇を美味そうに食っていた姿を思い出した。アルコールで溶けたように濡れた瞳がすぐそこにあって、快楽の涙で濡れた睫毛を伏せた表情がものすごく色っぽかったんだ。その顔が見たくて、キスをする時ずっと見つめていた。  今までしてきたどんなキスよりも、夢中になって、唇を貪っていた。  それと同じように舌を重ねて、絡ませて、水音も唾液も全部を美味そうに、郁登が喉を鳴らして飲み込んでいく。  俺のキスって言うけど……あんなの、このキス顔のほうがよっぽどヤバいだろ。こっちを限界に煽りまくっている。 「郁登」 「あ、ン、健人のキスでイかせて」  酔っ払ってんのか? さっきまで躊躇っていたくせに、あのギリギリを超えた瞬間、なんでこんなにやらしいんだよ。  体育教師とは思えない細い腰を浮かせて、しなやかに筋肉を躍動させながら、俺の掌の中をぐちゅぐちゅに先走りを掻き混ぜている。そして舌でやらしく俺の口腔を貪りながら、痺れるほど甘い声を流し込んでくる。 「あ、ダメ……んんっ!」 「郁登」 「イくっ」  そう啼くように囁かれた瞬間、掌に眩暈がするくらいに熱い体液が溢れ返って、息が止まりそうなほど、深く唇が重なった。 「あ、あ、あ、ン……健人……」  やらしい顔でこっちを見上げて、射精と同時にブルッと震えた郁登は、目尻から涙を一筋零して、その姿が女には到底出来そうにない、独特の色気を持っていた。 「キス、すごい気持ちイイ」  そう蕩けた顔で言う郁登は、まだそのキスをしたいらしく、俺の首に腕を絡ませて、また舌を弄っている。そして引き締まった身体は俺の下で大きく、その脚を広げて誘っていた。

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