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第16話 可愛い告白、やらしい身体
「郁登がキスしてる時の顔、たまんない」
キスが好物らしい郁登はTシャツを胸の上まで捲り上げて、両手を後ろについて体をおこしながら、トロンと蕩けた表情で、こっちを見つめている。ぷっくりと腫れぼったい赤い唇は濡れて、まるで果汁を滴らせているように見えた。
そして本物の実のように美味そうなピンク色の粒に変わった乳首を晒して、脚を大きく広げている。
「やらしい格好……」
「ん、だって」
「林原先生はここ、こんなに濡らして……やらしいね」
「も、健人、それやめっ……ンァ!」
先生ごっこ、じゃない。本物の教師なんだから。それでも日の下で、爽やかに体育を教える先生が、男とこんな濃厚なキスをして、身体を濡らしているって、それだけで興奮するに決まっている。
「止めて欲しい? でも、ここ、勃ってるけど?」
「やァァっ! あ、あ」
イったばかりの身体は敏感に愛撫に反応していた。キスマークが簡単に残る肌は、うっすらとピンク色で、もうすでに乳首の周りには赤い模様がついている。
「キスマーク、消えちゃったね」
「んあっ! そ、それ! 言われただろっ!」
肌に歯を立てながら、聞き返したら、律儀に小さな愛撫にさえビクビクと反応しながら、途切れ途切れの声が教えてくれた。
美里、郁登の元カノに指摘されたって。食事デートに誘った日、あの晩に郁登のマンション前で復縁の話をしようと待っていた彼女は、はっきり断ろうとしない郁登に抱き付いた。それを振り払った時、襟口からまだ残っていた、消えかけのキスマークを指摘された。
「別れたばっかで、もう別の女が、って怒られた?」
「……」
無言で目を伏せている。
「そ、の時、なんか、健人のものって気がした」
「俺の?」
キスマークは忘れてあげると言われたあの晩のセックスの名残ではなく、自分が誰のものかを知らせるマークのように思えた。
俺はそんなつもりで残したわけじゃないけれど、あの時、俺が口を出せる立場に自分がいないことを思い知った時、俺のキスマークはしっかりしゃしゃり出ていた。
「あ、あんたのものって、そう思ったら」
「思ったら?」
「ドキドキした」
もうすでに俺は陥落しているのに、この人はそんな俺をまだ羽交い絞めにして、覆い被さって、視界さえ誰も邪魔出来ないように占領しようとする。
素直にそう告白している言葉は可愛くて、目を離せなくさせるくせに、その言葉を呟く身体はやたらとやらしくて、エロすぎるせいで、直視できないほどだなんて。
「それと、健人の身体に残った痕、あれってまだあるのかなって」
「……」
「あれが俺のものって印にならないかなって」
迫っていたのは俺だ。好きだって、セックスした翌日には告白していて、それに郁登は困っていたくせに、なんでそこで落ちるかな。もっと俺がそばにいる時に、そのスイッチを押して欲しい。
俺の知らないところで俺のところに落っこちて、そして、こっちの気持ちを不安に思っていたなんて。
つまりあの音楽準備室で喧嘩をした時、「あんたは結局誰が好きなんだよ」って思ったけど、あの時点でこうなれたわけだ。それを元鞘に戻りたいのかって訊かれて、じゃあなんでアピールするんだって、郁登は怒っていた。好きだって言いながらも、その口調に男同士、教師同士、そんな悩んでいる雰囲気がなかったから、軽い気持ちなんじゃないのかって、不安に思っていた。
キスマークを、噛み痕をお互いの所有物だって感じる。そんな激しい感情を――。
「郁登」
「な、なんだよ」
「好きだ」
だって男同士って戸惑いも、教師同士で倫理的な問題も、もう頭に浮かばないくらいに夢中になったんだ。
この声色なら、それが伝わるだろうか。真っ直ぐに目を見て、そう告白をするのは何年ぶりだろう。駆け引きは上手いほうだったはず。それこそこっちが先にいいなって思った相手を、上手く引き寄せて、向こうから「好き」の一言を言わせられるくらいに、恋愛は上手いほうだった。相手の心が動いた瞬間なんて、笑えるくらいに簡単にわかったのに。
「健人……」
「あんたが欲しくて仕方がない。誰にもあげない。あんただけが、郁登だけが欲しい」
それなのに郁登に完全に落ちて、そしてまるで子どもみたいに、郁登が何を考えているのか、誰を想っているのか、ってだけで頭の中がいっぱいになった。
夢中すぎて、今までの恋愛経験値が全部パアだ。全部、何一つとして使えなかった。
「あの……」
だから、その可愛い反応と、そのやらしい身体、そのアンバランスが絶妙すぎて、それをさっきから目の前に晒されている俺は、もう限界なんだけど。
「キスマーク、健人の唇でつけて」
「……」
「全部に。それと俺のものって印も付けさせて。あ、あんた知らないだろうけど、相当フェロモン出てんだかんな」
「俺?」
それを言うなら郁登だろ。隣の席で、何度、そのうなじや鎖骨に目を奪われたか、数えてなんていられないくらいだ。ゲイの素質はなかったはずなのに、気が付いたら、その身体に、肌に触れることばっかり考えていたくらいだ。
「ピアノとか弾けてさ、それに、シャツとか着て、ネクタイなんてしてさ」
「いや、普通だろ、教師なんだから」
「そうだよ! それ! 教師のくせに、あの晩、あんな顔して……」
「どんな顔」
ニヤッと笑いながら、脚を広げたままだった、その筋肉がついたしなやかな太腿を指でなぞった。息を詰まらせて、いきなり再開された、まだ軽い愛撫に感じている。
「その、イ……く時とか、すごいやらしい顔して……見てるだけで、こっちがおかしくなる」
「俺のイく時? 郁登の中で?」
「バッ! バカ、言うな! それ」
「だって、気持ち良いんだよ。ものすっごく……今も、その時の感触を思い出してたまんない」
柔らかくて、きつくて、熱い、そして濡れた感触。あの中を突き上げると上がる喘ぎ声もたまらない。
「見たい? その顔」
「……」
喉を鳴らさないで。そんな濡れた瞳で、物欲しそうに唇を開かないで。
「んあ……ヤ、ァ……」
「っ」
先走りで濡れてぐちゅぐちゅのそこを指で遊ぶように、入口だけをくすぐった。郁登はねだるように舌を覗かせたけど、チュッとキスをひとつ落としただけにした。
見たい。喉が渇いて仕方がなかったんだ。ここへ、ヒクつくここへ、ゆっくりと、焦らすように指を挿れた時の、郁登の顔も身体も見たかった。そして見たら、止められなかった。
「あ、あ、やァ、あ、ン」
「中、すごいことになってるけど?」
「あ、あ、だって、中に、ある……ん、ン、健人の指が中」
ビクビクと身体が跳ねるけれど、その中心に指を深く咥え込まされているから、どうにも出来ずにいる。そして腰は、あの晩の甘い快楽を思い出して、自然と指を食べるようにくねっている。
「や、ァ、健人の指が中……」
「柔らかい」
大きく開いた脚、曝け出された奥を指で抉じ開けられながら、郁登はまた甘くて蕩ける声で啼いている。
「まだ、イかないで」
「やっ何で!」
ダラダラと涎を流す屹立をきゅっと指でせき止めると、濡れた瞳は切なげに涙を零している。
「これ、挿れさせて」
「あ……すご」
片手で下着ごと下ろして見せると、驚いて、でもじっと見つめている。
「好きだよ、郁登。だから、俺もイかせて」
そう頼んだら、自分の身体を支えていた腕を俺へ伸ばして、そのそそり立った竿を包み込んだ。
まだ掌なのに、その刺激は強烈で、痛みに近い感覚で息が詰まる。俺の指で身体の中心を犯されて、乳首を指で摘まれながら、郁登は両手を俺の中心に添えると、優しくやらしく扱いてしまう。もう育てる必要なんてないくらいに、固く勃ち上がったそこはもう限界だ。
「健人……お願い」
「……」
「も、我慢出来ない、早くイこ」
本当に……困った人だな。学校の先生にそうやらしく誘われて、潤んで柔らかい肉を犯している指を抜いたら、甘くて熱い溜め息に次の快楽を期待していた。
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