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第17話 セックスし合うっていうこと

 キスマークが本当に簡単に残る肌は、大きく開いた身体をこれから貫く衝撃に期待しているみたいに、ほんのりと染まっている。 「あ……」  入口に触れた先端にさえ、ぶるっと身体を震わせて、しかめられた顔が色っぽい。引き締まった細い腰は、両手で掴むと、指に吸いつくみたいにしっとりとしていた。  自然と溜め息が零れる。先端を潜り込ませるだけで、身体が熱くて喉が渇く。 「あ、挿って……ン……ァっ」 「郁登っ」 「あ、や、あァァァァ! んん、ア!」  あの晩よりもヤバい感触。アルコールがないからってだけじゃない。あの時よりも深くてやらしい郁登の体内に、繋がった瞬間から、思考が停止してしまった。 「っつ、郁登」 「ア、奥、イイ、あ」  腰を掴んで奥へと突き上げるみたいに郁登のしなやかな身体を揺さ振る。中はきつくて狭いのに、柔らかく絡みつくようで、その気持ち良さに眩暈が起きる。お互いに息が熱くて荒い。目が合うと、感度の良い郁登はきゅっと俺を締め付けた。 「平気?」  前にセックスをした時は幾分アルコールで感覚は麻痺していたはずだ。実際、今、繋がった場所は神経が剥き出しにでもなっているみたいに、お互いが身じろいだだけでも、ゾクゾクとするほどの快感が押し寄せる。  繋がるように出来てない場所、質問するには遅いタイミングだけど、郁登の熱い息を唇に感じながら、そう尋ねたら、答えの代わりに舌が唇を舐めて開かせる。 「ん、奥、きて……」  舌を深く差し込まれながら、そうねだられて、精一杯我慢していた何かが外れた。しゃぶるような体内を分け入って、奥を何度も打ち付けるように貫くと、細く長い脚が跳ねている。  自分からも腰をねじって、奥へ衝撃を迎え入れるように、揺らめかせている。程よく鍛えられた身体は、気持ち良さそうに俺を締め付けながら、ちゃんとセックスをしていた。 「郁登の中、大変なことになってるけど?」 「あ、あ、あ、知らなっ! あ、そこっ」  そう短く甘く啼いた瞬間、きゅっとしゃぶりつかれた。 「ここ? ここが好き?」 「違っ! そこ、ダメ、って前立腺!」 「さすが体育の先生」 「も、バカ!」  クスッと笑いながら冗談っぽく言ってみたけど、もうそんな余裕はない。前立腺を押し潰すように突き上げると、郁登の表情がたまらないほど良さそうな色気を振り撒く。キスで赤くなった唇を舌が舐めて、湿らせると、水音にも負けないやらしい声が零れる。  身体の奥を雄で挿し貫かれて、喘がされている。乳首を尖らせて、感じまくっている。  そんな郁登の快感にどっぷり浸かっている姿に、こっちがおかしくなりそうだった。 「あ、健人っ! イくっあ、そこ突かれたらっ」 「俺もイかせて……」 「あ、すごっ! んんっ」  張り詰めた先端をグリグリと前立腺へ押し付けて、耳を愛撫する嬌声を、熱くてやらしい体内を夢中になって貪った。 「健人っあ、あァ――――!」  息も心臓も止まるほど甘く締め付けられて、頭の中を真っ白にしながら、ただ無意識にその唇を塞いでいた。 「熱っ……あ、あ」  郁登の上げる嬌声と自分が弾かせて、そのやらしくて柔らかい体内に打ち付けるタイミングが一緒で、それだけでどうにかなりそうに興奮した。郁登の中でイった、それを実感出来たことで、身体の熱が全然下がってくれない。  中に収めたまま、腰をほんの少しだけ奥にある、今さっき散々先端で愛撫した粒にまた触れる。 「あ、やぁぁっ! あ、あンっ健人! もっ」  イったばかりの身体には強すぎる刺激に郁登が全身を震わせている。 「気持ち良かった?」 「……」  言葉も出ないくらいに余韻に犯されて、郁登の腹の上には自身の白い蜜が、盛大に飛び散っている。派手にイった後に、気持ち良かったかなんて、答える必要すらない事を訊くと、柔らかそうな唇が「バカ」って形にゆっくり動いた。 「んふっ……ん、あ、溢れ、る」  どれが? キスで交換しあう唾液が? それとも、郁登の中に放った俺の精液が? そのくらいに郁登の身体が全部濡れていた。  ぐちゅっと響く音が卑猥で、そして俺の中にあったセックスっていうものを、全く別の代物に変えていってしまう。今までしてきたセックスと全然違う。こんな激しくて、夢中になれるものだなんて知らなかった。お互いに肩で息をしながら、まだ繋がっていたい。そう思っているのが、手に取るようにわかった。繋がっているのは身体だけじゃなくて、まるで思考回路も、なんだろうか。 「……郁登」 「や、ァ……ン」  日向育ちの郁登からは想像も出来ないような、やらしくて、腰を直撃する刺激的な甘い声。  深く舌を絡ませ合ってキスをしながら、繋がった場所をくちゅくちゅと音を立てながら、突き上げるのとは違う、焦らすように、中を小刻みに揺さぶった。 「健人っそれっ」 「もっとして欲しい?」 「違っ! あ、あ、あ、焦らすな、よ……それじゃ、たっァ……」  足りない、そう切ない声で訴えようとした時、ズルッと引き抜かれて、咥え込んでいた固くてそそり立った存在に逃げられてしまった。そんな寂しそうな声を出している。  茶色の髪は汗でしっとりと濡れて、それと同じように濡れた瞳が、じっと俺を見つめていた。 「……」  じっと見つめていたら、それだけで理性が溶けそうな、そんな危うい色気を持った瞳に、すっかり虜になっている。  ゆっくりと、激しくじゃなく、しっとりと唇を重ねた。何度か啄ばんで、口腔を犯す事なく離れたら、その足りない快感を欲しがって、郁登の瞳がもっと妖しく濡れてくれる。  もっとだよ……もっと俺に夢中になって……俺が完全にあんたしか、郁登しか見えなくなっているみたいに、この目の前にいる、信じられないくらいにやらしい人の虜になったみたいに。 「んあっ」  そしてこんな、生まれて初めてここまで夢中になった相手を、どうかずっと独占出来ますようにって祈りを込めるみたいに、そのやらしく尖って、勃ち上がって誘っている乳首のそばに、所有物だと示すように、ひとつキスマークを付けた。点々と残る、赤い印の中でも、一番強く、派手に、深く痛みすらあるくらいに、強く吸った。 「郁登も付けて……歯型と爪痕」 「い、痛いだろ」 「いいよ、っていうか、しがみ付いてないと、落ちるくらいに、中、掻き混ぜるから」  痛くていいんだ。むしろ痛いくらいにして欲しい。そのほうがこの質の悪い、人を無意識に陥落させるような男を自分のものに出来た実感が沸かない。 「あ、あァァァァ」 「すごい……やらしい格好」 「あ、あ、いきなり、そんな奥にっおかしくなる」 「俺はもうおかしいよ」  痛みを欲しくなる、そういうタイプの人間じゃなかったのに、あんたのせいで、俺の中は作り変えられてしまった。  郁登の中を掻き混ぜて、ぐちゅぐちゅに溶かしてるのは俺だけど、俺の中を全部埋め尽くして乱しているのは郁登だ。郁登だけが、こんなにおかしくなるくらいに欲しい。奥を何度も突き上げても、そのしなやかな身体を貪っても、足りないくらいに……俺は郁登に夢中なんだ。 「あンっ! あ、あ、ァ、また、も、イく」  繋がった場所は、中を満たしている俺の体液と、郁登のやらしい先走りで、見ているだけでも喉が鳴るほど卑猥に濡れて乱れている。  自分の放ったものを自分で掻き出すように、そしてまた中へと送り込むみたいに、何度も何度も俺の形に広がった、肉壁を擦り上げた。 「あ、やァ! 健人、もっと、奥にきて」 「郁登」 「あ、あ、あ、気持ちイ、すご、溶けそ」 「っ」  肩にしがみ付いて、目尻から涙を零しながら、郁登も身体の奥を俺の屹立に擦り付けるみたいに、激しく押し寄せる快楽を堪能している。  俺の下で踊るようにセックスを自分からして、その長くて白い指を俺の肩に食い込ませていく。爪を立てて、自分の男だって印を、腰を打ちつけ激しく突き上げ続ける身体に残していった。 「あ、健人っ」 「イかせて、郁登の中で」 「あ、奥がいいっ! もっと奥」  誰も触れた事がない、郁登の身体の奥、心臓にさえ届きそうなくらいに、奥を何度も突き上げながら、二度目に弾かせた大量の精液に、郁登がブルッと身体を震わせて、自分の顔にかかるくらいに、派手に達した。その瞬間の締め付けに、世界が真っ白になるほど、意識が飛ぶ。  ――健人  そう切ない声に名前を呼ばれて、俺の世界は本当に郁登でいっぱいに満たされていた。

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